プロセスがいい建築は、絶対にいい建築になる
迎川:じゃあ次の質問に移ります。ルール3は架構です。橋をはじめとして、野沢さんは架構の話をよくしますよね。先ほどもちょっとお話ありましたけど、橋梁への憧憬。それからハブラーケンのサポート&インフィル。それと木造ドミノ住宅。この辺と架構がどう繋がっているのか。野沢さんの頭の中にある架構への夢みたいなものも含めてお話いただけるとありがたいです。
野沢:木造住宅ができるときに、何が1番楽しみかっていうと、棟上げなんです。やっぱり惚れ惚れするというか。やっぱり人間が工夫した架構っていうのかな。骨組みが五重塔とか法隆寺の金堂とかなんでも、基本的には架構のまま見えますからね。人間の工夫は、あの大きなものを組み上げるっていう、どうやって組もうかっていうあたりに、僕たち専門家、エンジニアとしても興味もあるし。何よりも素直なストラクチャーが好きなんですよ。それと、架構までのプロセスも好き。プロセスがいい建築は必ずいい建築になる。
木造ドミノの住宅で言うと、初期の段階で一緒に絵を描かせてもらった。そのあと迎川さんたち相羽建設が、プロセスをデザインした。つまり、こう言うプラットフォームで作業ができるとか、ちゃんとシステムを設計した。クレーンや重機がある内に荷物を全部上げておくと、下から上に上げるよりは、上から下に下ろす方が、圧倒的に労力が少ないよねとか。そんな細かいところまで全て考え抜いている。「木造ドミノ住宅すげーぞ」と思ったのは、プラットフォームを作ってちゃんと仕組み化したこと。これは大きな分岐点なんじゃないかなと思う。
木造ドミノ住宅はオープン・ビルディング・システムなんだよね。それまでの常識として、在来構造による木造住宅の室内に、構造壁一切なし、なんて誰も考えたことないと思うよ。だけど、迎川さんたちと、山辺構造設計事務所と一緒に、どうやったら50万円で行けるかっていうことを考える中で、結果として、ハブラーケンさんの言っていたサポート・インフィルに辿り着いた。
先例としては奥村昭雄が三鷹に作った住宅がある。吉村順三が作った最小住宅なんかも、大きいスケルトンだけ作って、中の間仕切りは合板1枚立ってるだけ、みたいなのやってますから。やっぱりそういうのが頭の中にチラチラあったのかな。前例が全くない訳ではない。ただ、前例を作った人が、本当にそんなことを考えてたかどうかはまた別の話。だけどチラッと、これでいいぞっていうのが出てくる時は、昔の奥村のやったものとか、あるいはハブラーケンさんの考えたものとかいうのが、僕の頭の在庫のどこかからチラッと出てきて、大丈夫そうだと思ったのかもしれないですね。
ということで、話は戻っちゃうんですけど「善意」である橋を見に行くのは勉強になりますよ。あ、くどいですかね?(笑)
迎川:ドミノ研究会で橋をやりますか(笑)
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