建築家が「循環できる社会」をつくる
迎川:皆さん楽しみにている話もありますので、次に行きますね。2つ目は「環境」について。野沢さんは日本建築家協会の環境部会長を2回務めていますよね。
野沢:そうですね。2〜3回は。
迎川:3回ですか。省エネルギー、脱CO2、こういったことに対して、どんな見識を持ってるか。よく野沢さんは「サステナブル」ということを言ってましたよね。循環社会。きちんと循環できる社会にしなきゃダメなんだと。こういう環境に絡む事、これ以外にも含めて環境についてどういうふうな考え方を持ってるのか。ぜひ教えてください。
野沢:なんでもそうですけど、建築家が設計する時って、何か手がかりがないと設計ができないって気がするんですよね。意味のある「独断的」な考えだったり、建築やまちに対する「説得力」がなかったりしたら、それはただの自己満足になってしまう。つまり、根拠がないといけない。
よく言うのは、ここの窓丸くしようと思ったけど、丸くしたことに対して、根拠がないと。翌日は、三角でもいいやと思って、翌々日はやっぱり四角にしようか、なんてことはザラにある。そういった意味で考えるとね、「サステナブルデザイン」っていう持続可能なデザインっていうのは、やっぱり根拠になると思うんですよ。こういう理由でこれだけのCO2の削減ができますと。あるいはOMソーラーもそうですけど、太陽熱によってこういうふうに暖房できれば、あるいはお湯が作れれば、これだけの石油エネルギーとか他のエネルギーを使わないで済んでます、と。それは大きな根拠になりますよね?その根拠がある建築を設計するっていうこと、建築を考える時に根拠がいるって言うことが、環境を考えるってことのかなり大きな理由になる。
この令和時代には、サステナブルが、何か流行りのような形で広まっています。サステナブルデベロップメントゴールズですか。サステナブルと類似語っていうのはリューラブルっていうらしいんですよ。それに対して、ジューラブルっていうのは、飛行機の外皮なんかに使ったジュラルミンっていう合金のことを言います。あのジュラルミンのジュラっていうのはジューラブルのジューなんです。永遠に普遍的な~みたいなものがジューラブルなんですね。
永遠なものっていうのは多分人間の作り出したものの中にないし、自然の中にも多分ないと思うんですけど。持続可能なっていうのはそれと全く違って永く使うことですよね。つまり何が言いたいかと言うと、サステナブルは、滅びていきそうなものをかろうじて維持しながら使い続けるっていうのが本質。これはすごく大切な視点だと思う。
要は、メンテナンスして使い続けるっていうのがサステナブル。あるいは、循環型にするとかね。リサイクル、リユースとも言う。それと同じことで、社会に対して責任を持って、循環型にして廃棄物を出さないことが、建築家と工務店には必要な視点なんです。
そのためには、ささやかなものを大切に使い続けること。直し続けるっていうのが、これからの社会に必要なこと。ただし、そればっかり言ってる割には、その通りになってないよね。それは僕たちが仕事の上じゃなくて、一市民として、そこを意識的に、かなりひどく意識的にやっていくべきことなんじゃないかなと思う。
つまり市民としての作為が建築家として、あるいは工務店としての作為に繋がる。環境を考えロングライフであってほしいし、時間の持続性を考えることが大切だよね。おじいさんの作ったものとか、場合によっては、その先祖が作ったものが社会の中、まちの中に普通に存在している—そういう風景にしておかないと、ぜんぜん豊かな社会じゃないでしょう?皆さんはどう思いますか。きっと、迎川さんもそう思ってるでしょう。
迎川:そうですね。循環ということで言うと、木造ドミノ住宅が70年という1つのサイクルを決めたのもそこにありますね。ドミノで使ってる4寸角の柱、あれをとるのにだいたい山で50年かかるわけですよね。それと切った後、山をならした後、また植林って言うと大体60〜70年のサイクルになる。それがうまくいくと、いろんな産業もうまく回ってくる。こんなふうになるんじゃないかということで70年という数字を出していたことを思い出しました。
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