ニュータウン —近年のまちづくりに思うこと
迎川:はい。ありがとうございます。じゃあいよいよ最後の質問です。ルール5。まちづくりについて。これも先ほど話したこととダブりますが、日本の公団住宅に野沢さんは関与してますよね。日本のある時期にできたニュータウン。神奈川県の港北ニュータウン、東京の多摩ニュータウン、千葉の千葉ニュータウンとか。このニュータウンですよね。それとソーラータウン府中と。こういうまちづくりに関して、野沢さんの考えていることを教えてください。
野沢:僕は意外に公団住宅が好きなんですよね。映画「人生フルーツ」にご出演されている建築家の津端修一さん(90歳)と言う方がいます。あの人が関わって、欅の木をたくさん植えた公団住宅、多摩ニュータウンが開発された以前の住宅があります。住宅団地はすごく好きなんですよ。一時はずいぶん通ってみたりしたんですけど。さっきの話とダブるんですけど、唯一住宅しか建ってない土地って、単一であるっていう事がすごく気になるんです。公団住宅が、最近ちょっとリノベーションしたり、色々直したりとかして大切に直しながら育てているものも魅力的じゃないですか。いや、これってね、実はすごく大切なことなんだ。住宅を作る上でも、案外役に立つかもしれないし、50〜60年前こんな住宅地を作ってたのかっていうのを知るのもなかなか面白いと思う。ただ、やっぱり管理の問題が気になるかな。
要は住んでらっしゃる方々は、管理は全て公団の管理会社におまかせで、自分達が手が出せないようになってるようですよね。環境としては素晴らしいわけです。住棟と住棟の間がきちんと離れていて。冬でも1階の住宅にきちんと日が入る。穏やかで豊かな住宅の配置計画になってたりしますからね。だからいいんですけど、もっと自分たちで考える余地はあると思う。
例えば空地で大根が採れたりね。空地のある部分を共用部として畑にしたり、ある部分には小さな小屋を立てたり。そういうふうに工夫ができる、住んでる人たちがそこに参画できて、工夫ができて運営ができるっていう状態が出来ていくと、もっと豊かな暮らしになるはず。
つまり、管理を自分たちの手でやること。勝手なことをやるってことじゃなくて、みんなで協議して創意工夫していくのが大切だと思う。計画があるっていうことは、計画のない場所よりも圧倒的に優れていると、僕は相変わらず思ってるんですよ。虫食いのように広がっていった、例えば田園を潰して住宅がいっぱい建ってるようなエリアよりは、特に初期のニュータウンみたいな計画的に、「善意」でつくられたまちの方が魅力的なんだよね。
迎川:東村山は、新宿から30分のところにあります。公団住宅がすごく周りにいっぱいあるんですよね。それを見てると1980年代ぐらいから建ってきた高層型の住宅、民間がたくさん開発していった高層マンションの住宅地とは明らかに違う部分があるんですね。それは野沢さんがまさしく言ったように、ちゃんと計画されたまちかどうか。それともう1つは「人の暮らしが豊かになるよう」と考えられていた公団住宅と、「ここでどれだけ儲けられるか」っていうことを考えていた民間のマンションとの違いっていうのが歴然と見える。
野沢:そうですね。やっぱ公団住宅って言うのは賃貸の方がいいと思います。だけど今の話みたいに、自分の住環境っていうのがこれによって守られてると思う方がいるところではやりにくいでしょうね。だから本当はさっきのヨーロッパの話なんかも、オープン・ビルディング・システムは、基本的には住宅は所有してないですよね。マンションなんかは、長いスパンで考えると、所有の仕方は相当難しそうですよね。所有権は本人にあるけど、本当は所有してない状態に近い。だから、改修が難しかったりするのはそう言うことでしょ。
迎川:阪神淡路大震災でダメージ受けたものを建て替えたものなんて少ないですよね。
野沢:そうだと思う。迎川さん、今日はこのくらいにしない?疲れてきちゃったよ(笑)。
迎川:はい。ちょうど時間もいいところになりましたので。今日はこんなことで野沢さんに色々お話を伺いました。お疲れ様でした。
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