野辺公一(のべ・こういち)
住宅系コンサルタント。住宅専門のシンクタンク・オプコード研究所所長。SAREX(住環境価値向上事業協同組合)で工務店力向上ワークショップを主宰。
やはりそっちに行ってしまうのか、と思わずにはいられない、最近の住宅成り立ちコンセプト。なんだか住むことの、つくることの本流を失ったままでいるような気持ちになる。
自らの得意とするものを謳うのは当然だが、その謳い方が妙に排他的。これ以上は分かっている工務店、すなわち私たちの世界ですよ。それ以下は、何も知らない工務店というようなあけすけな差別化を本人たちが意識しているかは別として、やられているような気がする。
やめておけばいいのにと思う。日本の木造住宅生産はやっと先端が見えてきたという段階であり、いまだ過渡期なのだ。あなた方のやっていることなど、10年もしないうちに技術としては普通になっているし、2、3年リードしたって、顧客はその場でしか寄ってこない。
しかし、ここでは先端をつかまえつつある、ということが大切なのだ。ここでいう先端とは、ひとが住むという環境下において、安全で快適で安心して暮らしを営むことができる、ということだ。
この基本的な住居の高度化の到達点をつかまえ、既に具体化しつつある、ということである。この先端をつかまえたということは、建て替えのモチベーションを形成したり、ストックとしての周辺への刺激、流通価値の生成、そして何よりも地域の環境、災害の教訓の読み込み、再生可能エネルギーを中心とした暮らしの体系の整備へと一筋の流れをつくりだすことができる、ということだ。
例えば、再び10年後から振り返れば、くだらないレベルでの競い合いというのがある。高性能住宅の数値競争である。以前、東北の大工たちが数値を競って、結局・・・・
続きは、『新建ハウジングプラスワン2019年10月号(2019年9月30日発行)に掲載しています。
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