国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は4月4日、第6次評価報告書第3作業部会報告書の、政策決定者向け要約(SPM)を公表した。同日、日本語訳も公表された。SPMは、温室効果ガスの排出量は、2010年以降すべての主要部門で世界的に増加していると指摘(下グラフ)。一方で、再生可能エネルギーやEV向け蓄電池など、低排出技術の単価は継続的に低下しているとしつつ、開発途上国では、それら技術を可能にする条件が整備されていないためイノベーションが遅れていると指摘している。
さらに、既存・計画中の化石燃料インフラが今後耐用期間中に排出するCO2の量は、温暖化を1.5度に抑える経路の正味の累積CO2総排出量を上回ると指摘。COP26以前の各国の計画では21世紀中に温暖化が1.5度を超える可能性が高いという見込みを示し、2℃より低く抑えるには「2030年以降の急速な緩和努力の加速に頼ることになるだろう」とした。
また、適切に設計され、効果的に実施される緩和策によって新築・改修された建物は、「将来の気候に建物を適応させながら、すべての地域においてSDGs達成に貢献する大きな潜在的可能性を有する」とし、2050年に排出量正味ゼロに近づくと予測。一方で、野心度の低い政策は、何十年にもわたって、建物の炭素ロック・イン(固定化)を起こすリスクを増大させると指摘している。
IPCC第56回総会と同パネルWG3第14回会合は3月21日~4月4日にオンラインで開催。IPCCは9月の第57回総会で第6次評価の統合報告書の承認等を予定している。
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