開催まで1カ月を切った『工務店カンファレンス2022』。登壇スピーカー(工務店)の取り組みやビジョンを紹介するカウントダウン企画として今回は、“ファーストペンギン”(ベンチャー精神を持って真っ先に行動する個人・企業)となり工務店業界のDX(デジタル改革)をリードしていきたいと精力的に活動する工務店・ecomo(エコモ、神奈川県藤沢市)の中堀健一社長に話を聞いた。中堀さんは、バーチャルによる現場管理システムの開発など、DXによる工務店の業務効率化と生産性向上を支援するlog build(ログビルド、同市)の代表を兼務。生活者から選ばれる次世代の工務店像として「スマートビルダー」を掲げ、全国の工務店の仲間と共に目指したいと語る。
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DXは「選ばれる工務店」への必須条件
CX・働き方改革・生産性向上を同時実現
コロナ禍において加速したデジタル化の波は「建設産業革命」を引き起こしたと言っても過言ではない。世界同時多発的に感染拡大していった新型コロナによって、それまで他産業に比べて遅れも指摘されていた建設産業においてもデジタル化せざるを得ない状況になったことは記憶に新しい。
すでにDXは、肯定、否定を選択する概念ではなくなり、もはや、「やって当たり前」という世界になってきている。そのことを踏まえて工務店も、自社の体制や規模などを考慮しながら、なんのためにDXに取り組むか戦略的に考えていく必要がある。そこを定めていないとDXを導入することが目的化し、CX(顧客体験)の向上や働き方改革・業務効率化、生産性向上といったゴールから遠ざかってしまう。
log buildでは、よく全国の地域工務店から相談を受けるが、その際に多いのが「どの施工管理ツールを使えばいいか」「どのように活用しているか」といった内容だ。ツールをうまく使いこなせばDXが実現し、魔法のように生産性が向上するわけではない。まず重要なのは、家づくりにおける営業や集客、打ち合わせ、設計、施工管理、アフターサービスといった全てのプロセスを可視化し、全体最適を図ること。これからの工務店は、そのようにプロセスを可視化し、全体最適を図ったうえで、全ての業務にデジタルを用いて効率化や品質、生産性の向上を実現していくことが求められる。
そして、DXが浸透したその先には、家づくりや経営のプロセスそのものの“改革”が見えてくる。プロセスの改革によって、顧客に向き合って満足度を高めたり、企画や設計、施工・納まりの練り込みなど、より本質的でクリエイティブな時間(仕事)を増やし密度を濃くしていくこともできると考えている。それこそが、私が業界に対して提唱する社会・顧客から求められる「スマートビルダー」の姿だ。
デジタルリテラシー高い一次取得層に向き合う
コロナ禍において建設産業でもデジタル化は一定程度、広がったが、リモートワークが普及した社会と市場で、工務店業界はまだ他産業と比較してデジタル化が遅れているのではないかという問題意識を持っている。家づくりのプロセスにおいてもデジタル化が欠かせないファクターとなってきている以上、例えばデジタルに対するリテラシーが圧倒的に施主の方が高いとしたら、それはより良い家づくりにとってマイナス要因となる可能性がある。
そうした状況を考えてみると、今後の住宅市場では、どんなに優れた家づくりをしていたとしても、デジタル化が進んでいなければ、生活者の家づくりの選択肢から外れてしまうリスクがある。住宅の一次取得層のボリュームゾーンは、ネット、スマホ、パソコンなどの環境・デバイスに慣れ親しんで育ってきたIT、デジタルへのリテラシー・感度が高い20代後半~30代前半の世代へと移りつつある。こうしたことを念頭に、自社の家づくりのプロセスを改めて振り返ったうえで、何を改善すべきか検証し、デジタルを有効に実装するようDXに取り組むことが不可欠だ。
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