「脱炭素化の潮流は、確実に追い風だと感じている」。これまでも住宅の性能向上への取り組みと比例するように自社の業績を伸ばしてきた近藤建設興業(岡山県岡山市)社長の近藤直岐さんはそう話す。環境やエネルギーの問題が身近になるなか、断熱・省エネ性など住宅の性能に対する生活者の理解は「着実に広がっている」ととらえる。近藤さんは、高断熱・高気密がさらに当たり前になっていく市場で、新築・既築を問わずに快適・健康で経済的な “パッシブな暮らし”をデザインする企業として存在感を発揮していきたいとビジョンを描く。
※月刊アーキテクトビルダー2022年4月号掲載。内容は取材当時のものです。
同社は今年に入り、標準仕様のUA値を省エネ地域区分4地域におけるHEAT20・G2レベルに当たる0.34W/m2Kに引き上げた。メイン商圏の岡山市や倉敷市は6地域だが、4地域のエリアからも引き合いがあるためだ。これにより6地域のエリアでは、G2を超える性能の住宅を提供していくことになる。住宅性能表示制度の断熱等性能等級でZEH レベルの等級5に加えて G2・G3に相当する上位等級6・7が新設される状況や適合義務化される省エネ基準の近い将来の引き上げといった見通しも踏まえて、「高断熱・高気密化がさらに当たり前になる市場に備える」(近藤さん)。
同社はこれまでも、スーパーウォール(SW)工法による高断熱・高気密・高耐震の躯体を備えるパッシブデザインの住宅をベースに、快適・健康で経済的(省エネ)な暮らしの提案を強化することで業績を伸ばしてきた。耐震性能は、全棟等級3で、8年ほど前からは制震装置も標準仕様に。気密については、顧客にはC値0.3cm2/m2を上回る数値(性能)を約束しているが、実際には専属の大工チームの高い技術力により0.1台がコンスタントに出る状況だ。
断熱の標準的な仕様は、壁にSWパネル(A種硬質ウレタンフォーム保温板1種相当品)100mm厚、小屋組み(桁間)には同80mmに加えて高性能グラスウール(16K)を105mm厚で敷き込む。基礎断熱で、内部立ち上がりと土間外周部90cm以上に対して、押出ポリスチレンフォーム断熱材100mmを施工。窓は、アルミ・樹脂のハイブリッドもしくは樹脂サッシを方角や位置によって使い分け、いずれもガラスはアルゴンガス入りのLow-E複層。北側に大きな開口を取るときなどは、樹脂サッシ・トリプルガラスを採用する。
「晴れの国」η値へのこだわり
近藤さんは「ただ単純に住宅の断熱性能を高めるのではなく、地域の気候風土を踏まえて、日射や通風も最大限に生かしながら、より快適で健康的で、経済的な暮らしを提案している」と強調。同社ではUA値以上に、・・・・・
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この記事は、『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー2022年4月号/超高性能住宅』(2022年3月30日発行)P.20~25に掲載しています。
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