パッシブハウスに取り組む小規模工務店の先駆者的な存在である島田材木店(茨城県石岡市)。今では問い合わせ・来社の2割がパッシブハウス希望だという。社長の島田恵一さんは「予算の範囲内でできる限り高性能に」をモットーに、断熱材や断熱する部位を使いわけつつ、重要な部分はひとつに方法を絞り、顧客それぞれに最適な形の高性能住宅を提案している。
UA値では測れない要素を暖冷房需要で表す
これまで同社では、UA値0.4W/m2K以下の「ローエナジーハウス」を標準に、「ローエナジーハウスプラス」(UA値0.31W/m2K以下)、パッシブハウスの3段階の水準で仕様を提示していた。しかし、実績を積み「顧客満足度の高いライン」の下限として、HEAT20・G2程度の水準が見えてきたとして、今年からはローエナジーハウスプラスを標準として、パッシブハウスとの2グレード制に絞る予定だ。
現在の標準的な性能は、「年間の暖房需要30kW/m2」を目安としている。「UA値では表現できない換気や、パッシブデザインの効果」を表現するため、島田さんはUA値ではなく、年間の暖冷房需要で性能を考えている。
5地域なので、標準レベルでも付加断熱は重要。40K相当のグラスウール「イゾベール・コンフォートλ(ラムダ)33」(マグ・イゾベール)105mm厚の充填断熱は共通で、外壁材によって付加断熱材を使い分ける。乾式の外壁材を使うときはフェノールフォーム「ネオマフォーム」30~80mm厚に。左官仕上げとする場合は、50~150mm厚のEPSによる湿式外断熱工法を採用する。
基礎断熱が中心、床断熱にも対応
足元の推奨仕様は基礎外断熱。立ち上がり外周に防蟻EPS「パフォームガード」100mm厚を施工し、底板下にはXPS「スタイロエース」100mm厚を敷き込む。さらにシロアリ対策として、アリ返し板金を設置している。
最近では、独・Glapor(グラポール)社の「発泡ガラスボード」を使った基礎断熱にもトライ。断熱性はやや低いため、立ち上がり外周の発泡ガラスボード100mm厚に加え、内側にもXPS50mm厚を施工する。アリ返しが不要になるので、トータルで見ればコストは上記の仕様とほぼ同等で収まるという。
ただ、予算が厳しい、あるいは蟻害が不安な顧客のために、床断熱にも対応している。床断熱では「ネオマフォーム」90mm厚を土台・大引間に充填する。さらに、同30mm厚を内付加断熱するオプションも用意している。基礎断熱と比べると、1棟当たり約30万円は安くなる。
上部の断熱は屋根断熱が主だ。基本は「厚みさえ確保できればコスパがとてもいい」グラスウール300mm厚のブローイングで、場合によってはネオマフォームを併用することもある。
開口部は・・・・・
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この記事は、『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー2022年4月号/超高性能住宅』(2022年3月30日発行)P.14~19に掲載しています。
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