人間は、口や鼻から酸素を吸って、二酸化炭素を排出して生きている。酸素は生きるために欠かせない。外では十分な空気があるので問題ないが、空気の入れ替えが十分でない室内にいると、酸素欠乏、二酸化炭素過剰になり、過呼吸、頭痛、めまい、知覚の低下といった症状が起こり、健康を損ねてしまう。換気が不十分な大人数の会議室などで、誰もが経験していることだ。高断熱と高気密化が進んだ現代省エネ建築物では換気をどう解釈すればいいのか。ドイツの事例を踏まえて考えたい。
池田 憲昭
Arch Joint Vision社代表
1972年長崎県生まれ。岩手大学在学中に、ドイツ・フライブルク大学に留学し、森林環境学について学んだ後、現地に移り住み、四半世紀にわたり、シュヴァルツヴァルト(黒い森)南西部に暮らす。ドイツ環境視察セミナーのオーガナイザー、異文化マネージメントのトレーナー、コンサルタント、日独プロジェクトのコーディネーター、専門通訳、執筆家として活動。2011年9月、Arch Joint Vision社を設立。もるくす建築社(秋田県大仙市)とスイス人建築家と協業し、エコロジーな建築思想と設計手法の普及を目指すモデル棟「KANSO」を同市内に建築。
Arch Joint Vision社代表
1972年長崎県生まれ。岩手大学在学中に、ドイツ・フライブルク大学に留学し、森林環境学について学んだ後、現地に移り住み、四半世紀にわたり、シュヴァルツヴァルト(黒い森)南西部に暮らす。ドイツ環境視察セミナーのオーガナイザー、異文化マネージメントのトレーナー、コンサルタント、日独プロジェクトのコーディネーター、専門通訳、執筆家として活動。2011年9月、Arch Joint Vision社を設立。もるくす建築社(秋田県大仙市)とスイス人建築家と協業し、エコロジーな建築思想と設計手法の普及を目指すモデル棟「KANSO」を同市内に建築。
私が20年前に通っていたフライブルク大学の古い建物の講義室では、先生も生徒も頻繁に「息苦しい」と言って、真冬でも休み時間ごとに窓を全開にして空気の入れ替えをしていた。1990年代末くらいまでに建てられた建物では、大半がこの人力での窓換気が行われている。築50年の我が家でもそうで、冬でも毎日、朝晩せっせと窓を開けて換気している。
換気の目的は、新鮮な酸素を取り入れるためだけではない。建材や家具などから発生する人体に有害な揮発性有機化合物(VOC)を外へ排出すること、それから料理やシャワーや人の呼吸で発生する水蒸気を外に出すことだ。湿気はカビを発生させ、建物と人間に重大なダメージを与える。
健康を守り、建物の物理的ダメージを防ぐ換気続きを読む▶︎
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