本州最北端の地で約170年に渡って事業を続ける菊池組(青森県むつ市)は、高性能住宅にも早くから取り組んできた。創業者から数えて6世代目の常務の菊池洋壽さんは、外皮性能の向上はもちろん、日射量が少ない地域でも最大限の効果が得られるパッシブデザインも追求。地元では「暖かい家をつくる工務店」としての地位を確立している。
受注ストップするほどの評判
同社が住宅の断熱化に取り組みだしたのは、菊池さんの父の代、1980年ごろだった。当時は北海道の技術を範とし、断熱工法のVCにも加盟していた。
現在の家づくりは、菊池さんが入社、住宅事業を担当するようになってから構築したものだ。VC頼りの断熱はやめ、自社で仕様を検討しながら、新たに新木造住宅技術研究協議会(新住協)やパッシブハウス・ジャパンに入会し、高性能住宅のつくり方を学んだ。UA値やHEAT20など、専門的な理解をする生活者はまだ少ないエリアだが、地元では同社の住宅は既に「暖かい家」として認識されており、顧客は絶えない。「行列が長くなるとプレッシャーを感じるし、社会情勢も大きく変動しうる」という理由で、この1年間は新規受注をやむなく中止しているほどだ。
雪国では付加断熱の施工スピードが重要
直近2年間の平均UA値は0.23W/m2K(3地域)。当然ながら外壁は付加断熱が標準で、高性能グラスウール「イゾベール・コンフォート」28K105mm厚に、フェノールフォーム「ネオマフォーム」60~100mm厚を組み合わせている。
加入している新住協では、付加断熱もグラスウールが推奨されるが、菊池さんがネオマフォームを選んだのは、厚さ(グラスウール 350mm厚相当の性能を、100mm厚の付加断熱で確保できる)と、施工性が大きな理由だ。冬は、天気が急に崩れる日も多く、施工が長引けば養生の手間も増える。「大工が3人いれば1日で施工が終わる」のは大事なポイントだ。
上部は天井断熱が多く、ロックウール500mm厚を吹き込むのが標準。ロックウールを使うのは「他の吹き込み断熱材より経年による沈降が少なく、他の材料・工法と比較しても価格と性能のバランスが良い」から。
暖房計画で基礎/床の断熱を使い分け
足元は基礎断熱、床断熱どちらもありで「だいたい半々ぐらい」の割合だという。床断熱はネオマフォーム100mm厚を根太・大引間に充填し、その上からXPSⅢ種b「ミラフォーム」30mm厚を敷いて床合板を張る。
基礎断熱は、・・・・・
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この記事は、『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー2022年4月号/超高性能住宅』(2022年3月30日発行)P.8~13に掲載しています。
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