2022年3月初旬、欧米の環境・人権NGO数百機関が連名で、ウクライナに友好的な諸国に向け、ウクライナに軍事侵攻するロシアと、ベラルーシを強く非難し、同国で生産されるすべての木材(丸太等)、木材製品、木製家具、ペレット、紙製品などの輸入を即時禁止してほしいと要請した。これらの木材輸出から得られる対価が、ロシアとベラルーシを利するものとなり、ウクライナの死と破壊を助長することになると主張している。木材流通、家づくりにどんな影響が出てくるのか。
欧州において、こうしたNGOの圧力は日本人が想像する以上の影響力がある。ロシアとベラルーシから木材を輸入する事業者、ロシア国内に投資し木材製品を製造している欧州の大手林産事業者は今後、重大な決断を迫られる。すでに天然ガス事業で、世界的なエネルギー大手がロシアと共同で進めていた事業の停止を決断している。欧州の総合林産業大手ストゥーラエンソ(フィンランド)も3月2日、ロシアでの木材製品の生産・販売(ダンボール工場3、製材工場2)を停止した。
ロシアに複数の家具等木材製品加工製造拠点を有するイケアもロシアでの製造体制の見直しを表明した。ロシア国内に木材製品製造拠点や合弁事業所を有する欧州林産事業所も同様の決断を迫られる。ロシアのデフォルト懸念もある。世論を敵に回し企業価値を毀損する恐れのあるロシアでの事業投資は、それでも欧州の木材産業にとって理に適うものなのであろうか。
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