住宅業界のインフルエンサーが「住宅産業大予測2022」(発行:新建ハウジング)について、激論する公式YouTube『しゃべくり4』が公開された。第4回目のテーマは「職人」。工務店業界で長らく議論されてきたドイツの「マイスター制度」日本版の実現性や、評価制度のあり方、職人不足にも言及。今回も業界、社会への“忖度なし”のディスカッションが繰り広げられた。
初回記事(パートⅠ)>>>”忖度ナシ”噂の4人が『住宅産業大予測2022』を語る
パートⅡ>>>「ぶっちゃけ、あのSNSどう?」噂の4人が出した答え
パートⅢ>>>「苦労至上主義」は厄介な敵 求められるミライの現場監督像
ダンドリワーク 代表取締役 加賀爪 宏介(かがつめ・こうすけ)
建築・不動産会社に10年勤務。年商2億円を数年で年商20億円の会社に成長させる。その間、社内ベンチャーとして建築・不動産業をトータルでサポートする株式会社リアルターソリューションズ、建築現場の施工管理アプリ「ダンドリワーク」を開発・販売・運営を行う株式会社ダンドリワークスを設立し独立。現在は、建築・住宅業界の抜本的改革を生み出すために、業界全体の活性化に繋がるよう日々業務に取り組んでいる。
BETSUDAI Inc. TOKYO CEO 林 哲平(はやし・てっぺい)
広告、出版系の企業にて映画・ファッション業界をはじめ、さまざまな企業の広告・プロモーションに携わった後、2010年にベツダイ入社。グッドデザイン受賞住宅「ZERO-CUBE」のブランディングとともに、新築規格住宅のフランチャイズ『LIFE LABEL』、住宅エンターテインメントメディア『Dolive』の340社を超える巨大FCネットワークの主宰として、両ブランドの商品開発から広告・マーケティングまでを手掛ける。2020年9月より民放ラジオ局InterFMにて「LIFE LABEL RADIO」のMCを務める。
サンプロ 代表取締役 青栁 弘昭(あおやぎ・ひろあき)
「株式会社サンプロ」の創業者であり代表取締役。ブランド経営の手腕に定評があり、「地域NO.1ブランドビルダー戦略」を掲げる同社は、1996年の創業以来増収増益を続けている。少子高齢化・人口減少の進む長野県にあって現在の年商は43億円。「地域ビルダーにブランド経営・クリエイティブのDNAを」との考えを実現すべく、地域ビルダー・リフォーム会社などによる「LOCAS」の発起人である。
myhm 代表取締役CEO 乃村 一政(のむら・かずまさ)
ITに特化したビルダー「SOUSEI株式会社」を立ち上げ、初年度24棟、2年目42棟と成長させ2年で地域No.1の工務店に。2012年からIoTデバイスの開発、2014年に自身の家づくり体験をきっかけに、マイホームの情報を管理できるサービス(myhmの前身サービス)の提供を経て、2021年に株式会社myhmを創業。マイホームアプリmyhm(マイホム)の提供を開始。住宅業界に特化したスタートアップとして、住宅プラットフォームサービスを展開している。
職人のレイティングは必要か
加賀爪 施工管理と言ったら現場監督の話に見えそうだけどそうじゃなくて、いわゆる職人さん、ドイツで言うところの「マイスター制度」みたいな感じのことで、今後も(マイスター制度は)必要ないという意見もあるだろうし、こういう風になっていく、ここがやっていく、という意見もあるだろうし、そういうもの(職人さんや施工管理に対する考え)をフリップにお書きください。
せーのっ!どん!
じゃあ乃村さんから。
乃村 はい。「食べログにはなりにくい」と書いたんですけど、マイスター制度というか、いわゆるレイティング(評定、格付け)みたいな制度って、まず評価される対象の人がたくさんいて無数に増えてくる状態でなりたつものです。
加賀爪 そうだよなぁ。
乃村 職人不足と言っているのにレイティング、スコアリングしてしまったら手数が減るんですよ。別に評価されたくないわ、と言う感情ももちろんあるし、そもそも評価して選んでいる場合じゃないというのもある。
林 諸外国はマイスター制度はあるの?職人が多いの?
乃村 ドイツで言ったら、例えば林業がわかりやすいんだけど、そもそも林業の地位が高い。その職種に勤めていることの「位」が高い。業界に対するあこがれというものが非常に強いというのが前提にあって、だからプレイヤーやプレイヤー候補がちゃんといる。
加賀爪 僕の中ではそういう人たちを増やすために(マイスター制度みたいなものが)必要なんじゃないかという話なんです。
乃村 あー、そうですね。
加賀爪 これの一番の目的は、職人さんが評価されるべきっていう話よりも、相対的に、要は稼げる職人さんのボトムアップをしたいということが一番で。そうであれば、(職人に)なりたいという人も出てくると思います。
乃村 なるほど、なるほど。
加賀爪 そうそう、そういうこと。
乃村 職人の今の環境では職人になりたい人が少ない。適正に評価される制度がないから。
加賀爪 そう。評価されていない。
乃村 今の若い人たちに、自分の人生プランとかライフプランの中でそこ(職人)で働くことが自分の人生を輝かせるんじゃないか、と思わせられていないのであれば、それが問題なのだとしたら、違うアプローチをしないといけないかな。
加賀爪 確かに。抜本的な解決としては、一つは工法の抜本的な改善。そもそも大工さんはいらないという風にしていくという進化もあれば、逆にもっともっと研ぎ澄まされた、年収2000万、3000万稼げるから(職人に)なりたいと子どもたちが思う世界にもっていきたい、という二方向ある。
一同 うんうん、なるほどなるほど。
加賀爪 青栁さん、どうですか。
青栁 はい。今の二方向という話は、僕はどちらか一方じゃなくて多分両方必要なんだろうなと思っています。
我々の会社でもいろいろ議論して考えたことがあるんですけど、なかなかそれを形に落とし込んで仕組み化するということができてない。
だから逆に言ったら、ダンドリさんとかが仕組みを作ってそれを世の中に浸透させることができるといい。職人になりたいという世界も含めて(仕組みを)作っていかないといけないんじゃないかな。我々も今、家を受注することよりも現場をちゃんとつくることの方が大きな問題になっているんです。
そもそも職人になりたい若者がいない、それはなぜなのか、と考えたときに評価もそうだし、そもそも職人さんである先輩たちがカッコよく見えていない、というところもあるだろうし、そういった意味でもテーマの一つでもある「スモールエクセレント」も含めて全部つながっていく話なんだろうなと思う。
昔のように大手ハウスメーカーがない時代って、工務店のヒエラルキーは上だった。それが大資本の大きなハウスメーカーができてきて、職人さんのヒエラルキーが下になった。孫請け下請けみたいに。そんな流れがある中でそういった制度をつくるためには、余程抜本的に何かを変えないとちょっと難しいのかな、と思ったりもする。
加賀爪 いやー、だから深いね。なかなか難しい。
最後に(林さんの回答に)触れといていいですかね(笑)
林 (その問題を)僕が解決しましょうか。(笑)
一同 (笑)
Pages: 1 2
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。