新建ハウジングではこのほど、全国の工務店を対象に「社会から求められる工務店」をテーマとしたアンケート調査を実施し、各社の事業と社会貢献の関係が、どのように認識されているかを探った。
社会や業界が抱える問題を、家づくりで解決しようとする意識は高く、経営や業績にも好影響が及んでいる。このアンケート結果については、4月19日に「ソーシャルグッドで生き残れ 」をテーマに開催する『工務店カンファレンス2022』(主催・新建ハウジング)のディスカッションにおいて議論する。
家づくりは環境への貢献 大多数が認識
工務店が特に関心を持っている分野が「居住者の健康」だ。事業と重ねて解決に取り組んでいるとの回答が92.3%に達する。次いで国産・地域材の利活用、脱炭素やSDGsなど、環境問題への意識が総じて高い。
また、人材や現場など、経営上の課題も関心は高いが、現実の取り組みとなると動きは鈍い。現場のDXや職人の待遇改善・育成について、実行に移しているのは約5割にとどまった。
具体的な取り組みとしては「住宅の高性能化」が85.1%で最多。高性能住宅、イコール社会への貢献という認識は定着しているようだ。その他木材・建材などの見直し、標準化・規格化など、家づくりに関する項目が比較的多い。一方で業務・人材関連項目は、デジタル化ツール・システムの導入以外は回答が少ない。
社会に役立つ工務店か生活者は見ている
社会・業界への取り組みが、どのような成果につながっているか。72.8%が経営、業績に「いい影響があった」と答えている。
最もダイレクトな形の影響が、問い合わせや受注の増加、顧客層の変化だ。工務店の姿勢や取り組みに共感する顧客が増え、単価アップやトラブル回避につながっているとの回答が特に多い。「地球や自分たちにいいものを選択している自負により、コスト・予算に振り回されないものづくりができる」という声もある。
ほぼ半数の回答者が、経営者・企業の姿勢が、生活者の選択に「強く影響している」と感じている。生活者が、人や企業としてのあり方を厳しく見ているのはもはや間違いないだろう。
社員・職人も役に立つことはうれしい
また、社員や職人にもいい影響が及んでいるようだ。社員のモチベーションアップに加え、「初めて新卒の人材を採用できた」「高校が理解を示し、職人になりたい生徒に(自社を)薦めてくれるようになった」という工務店もある。
一方で、経営者が事業の社会的意義を意識していても、社員、外部の協力業者まで浸透させるのは難しい。「あまり理解していないと思う」「ほとんど理解していないと思う」が36.8%を占めるのが現状だ。
55.3%は社員・業者の理解を深めるため、情報発信や研修を行っていると答えているが、そう簡単にはいかないようだ。
認知度は高く、コストや工期への影響も「ある程度許せる」
直近2年間で戸建ての新築注文住宅を取得した生活者600人にも、社会・住宅業界の課題に関する調査を実施した。住宅業界の中で課題だと認識されている事項は、おおむね生活者の認知度も高い。ただ、「SDGs」、「ヒートショック」や「働き方改革」など、生活者自身の暮らしにも関わるものは理解度も高いが、「脱炭素」は3割を下回っている。
高性能化や国産材利用は、生活者が気にしがちなイニシャルコストに、直に反映する。さすがに、いくら高価になっても良い、という人は少数派だが、実に8割が「ある程度までなら許せる」という。また、働き方改革の影響も、大部分は許せると答えた。
調査方法:インターネット上でのアンケート
調査期間:2月28日~ 3月11日
有効回答数:117社
この記事は最新号『新建ハウジング紙面 3月30日号 4面』に掲載しています。
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