職人の自社育成や女性監督の採用など、時代に先駆けて様々なことに挑戦し住宅業界をリードするポラスグループのポラテック(埼玉県越谷市)。約7年前からは、吉田東光(埼玉県さいたま市)が開発した現場カメラ『現場見守る君』を導入し、現場監督の業務効率改善に力を注いでいる。導入後にどんな変化があったか、ポラテック 木造建築事業部 建築施工推進部部長の大島淳裕さんと、同グループの住宅資材センター 施工部工事管理課課長の吉澤誠さんに話を聞いた。
埼玉・千葉を中心に年3400棟(※)もの新築戸建て木造住宅を供給するポラテックは、2022年オリコン顧客満足度ランキングで4年連続総合1位を獲得。構造・デザインといった住宅のハードだけでなく、グループ全体で施工からアフターメンテナンスまでを一気通貫で担うソフトの安心感が高く評価され、地元で絶大な支持を得ている。
(※)ポラスグループ全体の木造軸組・2×4工法による注文・分譲住宅を合算
現場監督の人手不足と移動時間が課題だった
そんな同社は今から約7年前、現場監督の人手不足に直面していた。「企業側が思うように人材を雇用できない時期にさしかかっており、人頼みではない方法でいかに現場効率を上げるかが大きな課題になっていました」と大島さんは振り返る。
同社における現場監督の標準業務は「現場巡回」だ。監督が現場で発生した疑問や問題をタイムリーに解決し、図面通りに仕上がっているか等を直接チェックすることで、施工品質と現場の安全を担保。当時は約80人の現場監督で見ていたが、移動に時間をとられてしまうため、全現場を毎日くまなく回るのが難しく、それが遠因となって職人の不満などにつながったケースも過去にはあったという。
そんな状況の改善策として挙がったのが、吉田東光の『現場見守る君』だった。
ポラテックが7年前から使う現場カメラとは?
『現場見守る君』は、ネットワークカメラとモバイル通信機器を一体化した現場カメラで、電源に挿してアプリ登録をするだけでパソコンやタブレット、スマートフォンからいつでも現場の様子をライブ映像で確認できる。すでに全国で1万件以上の導入実績があり、9割近いリピート率を誇る。
『現場見守る君』が発売されてすぐの2015年6月。現場の遠隔監視がまだ浸透していない時期に、大島さんらは自社の分譲地に現場カメラを設置して、その“仕事ぶり”を確かめてみることにした。
採用の決め手は何だったのか。「監督が現場の様子を事務所にいながら確認し、職人への指示や工程変更など、これまで直接現場に赴いてこなしていた業務の一部を“遠隔”でできたら理想的だと考えたからです」と大島さん。また「必要な時に必要な台数をレンタルでき、管理面での煩わしさがないのも良かった」と話す。
出戻り減少で工期短縮
実際に現場で試して効果を実感できたことから、ポラスグループのほぼすべての分譲地に現場カメラの導入を決定。同グループの新築施工と、現場カメラの設置・管理を担う住宅資材センターの吉澤さんによれば、現在は分譲地の規模や形状に応じて1現場につき1~3台、計100~130台が稼動しているという。この現場カメラが撮影したライブ映像は、大島さんのような管理者や現場監督が手元のタブレットなどでいつでも自由に確認できるほか、ポラテックの各拠点に設置された50インチの大画面モニターにも映し出され、事業部長以下、内勤スタッフの多くが自社の工事状況を身近で観察できる環境になっている。
現場カメラ導入後の変化や利点を大島さんに聞いた。「当初の目論見通り、監督の現場巡回の頻度や滞在時間が抑えられるので、業務効率の向上にとても有効です。加えて、映像を見ただけで現場の進捗がわかるので、的確な指示が出せるメリットも大きいと感じています。以前だと予定通りに工事が終わっていないのに次工程の職人さんが入ってしまうといったことも稀にありましたが、いまは文字通り“現場を見守る”ことができるので、工程ロス、出戻り、ムダなやり取りがなくなりました。定量分析はまだですが、当社にとって永遠のテーマとも言える“工期短縮”にもつながっています」。
現場美化、地域の安全にも貢献
また、ゴミの分別状況、ヘルメットの着用状況なども画面を確認すればすぐに分かるため、不適当であればすぐに連絡して改善を促し、現場美化や安全対策の徹底にも一役買っている。
さらに、積雪・強風・豪雨など、各現場の天候にも適切な対処ができるようになったという。例えば従来は、積雪予報があれば全エリア一斉に帰宅を促していたが、現在は現場カメラで実際の映像を確かめ、雪による影響がある所とない所を冷静に見極め、現場それぞれに合った判断を下して、工程ロスが起きないようにしている。
「台風前で時間がない状況でも、シートをきちんとたたんだか、飛散物が発生しないよう周囲を片付けたかなど、現場からの報告だけでなく監督さん自身の目で確認できるのが心強いでしょうし、現場の職人の意識向上にもつながっていると思います」と吉澤さん。さらに、建築現場を狙った盗難・放火事故のニュースが続いていた際に、近所の住民から「ポラスグループは現場カメラを入れているから安心」といった声が届くなど、間接的ではあるが地元の安全・防災にも貢献できているのではと話す。
施工管理の進化は夢がある
大島さんは最後にこんな話をしてくれた。「現場監督の全業務を遠隔で済ませるのは不可能なので、現場カメラはあくまでも補助的なツール。とはいえ、映像を見ればそこに事実が写るわけですから、施工・安全・清掃など現場の不徹底をなくすうえで欠かせない、とても有効なツールだと捉えています。今後は5Gの普及でより鮮明な画像を遠隔確認できるようになるでしょうし、ドローンのような無人航空機を使った現場巡回や、IoTウェアラブル端末と連動した安全管理、職人の健康管理なども遠い未来の話ではないでしょう。夢が膨らみますよね。『現場見守る君』のさらなる進化にも大いに期待しています」。
■お問い合わせはこちらから
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。