交通事故の死者数を上回る人が、転倒・転落、ヒートショックなど家庭内事故で亡くなっている。安全に住み続けられることも、耐震性や断熱性と等しく重要な性能だとして、家庭内事故を防ぐための基準「安全持続性能」を提唱しているのが、「ヨシローの家」の名で快適な暮らしや住まいづくりの実現に向けて活動する作業療法士・満元貴治さんだ。
子どもから高齢者まであらゆる世代が、家庭内で遭遇し得る事故のリスクを排除するため、13項目で設置すべき設備や寸法などを具体的に定める。
事故予防と持続・可変性を主眼に
作業療法士・満元貴治さんが提唱する「安全持続性能」は「『世代関係なく安心・安全に住み続ける家』にするためのあたりまえ基準」。住まい手の年齢や家族構成が変化しても、安全性が持続することを重視している。
基準の各論は玄関や階段、トイレから温度まで13項目で、各項目を★1つから3つで評価する。★★が「推奨」レベルで、★★★が「最高」ランクだ。全項目の★の数を合計して、家全体の安全持続性能を評価する。
13項目は「転倒・転落の予防設計(安全性)」、「安心に住み続けられる設計(持続性)」に大別される。前者は玄関室内側、階段、階段の段差、スキップフロア、収納・換気システムのフィルターを扱う。例えば階段は、手すり・足元灯・踏面のすべり止めが揃っていれば★★★。手すりと足元灯があれば★★と評価される。
後者は、土間収納、1階廊下、トイレ、ユーティリティルーム、室内干しスペース、洗面室、照明、温度(室温)の基準を定めたもの。ベビーカーや車いすの保管・使用、子どもの成長に合わせた部屋の用途変更、家事負担の軽減、健康維持など、経年による身体や住まい方の変化に対応するための内容となっている。
優先はトイレ・階段・段差
★★★は「底上げのため」厳しめに設定した基準。敷地面積や予算が絡む実際の設計では、全項目で高評価を目指すことが難しい場合も想定される。
満元さんは、13項目の中で特に優先度が高い項目として、トイレ、階段、段差なしの3つを挙げている。トイレは・・・・
【残り1800文字、写真6点、表・図面など。3面では満元さんが提唱する安全持続性能評価を実際に導入した旭ホームズ(広島市)の事例を掲載】
この記事は最新号『新建ハウジング紙面 3月30日号 1₋3面』に掲載しています。
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