シックハウスは、「住宅のトレンド」でとらえるべきではないテーマだ。ここでは、「基準を満たす建材さえ使っておけばだいじょうぶ」と、形骸化しつつある業界の認識を問い直し、「“いまどきの”シックハウス対策」として、改めて真に住む人の健康に寄り添う家づくりのあり方を見つめ直す。
自然素材のなかでムク材に次いで人気が高い左官材。建て主のニーズを見極めて、適切な製品を選定するポイントを説明する。
シックハウスに関心が高い建て主の多くは、左官材にも興味が強い。左官材に対する建て主の期待は、
①伝統技法の再現(製法・工法)
②伝統建築風の内装
③機能(調湿・VOC吸着)
といった 3 つの側面がある。「①②に対しては漆喰、③に対しては珪藻土建材を提案していくと外れがない」とシックハウス対策に詳しい自然派ライフ住宅設計(新潟市)の大沼勝志さんは説明する。
上記のように左官材の種類を絞った上で、シックハウス対策の視点を加味しながら製品選定を行う。ポイントは「原材料の検討」である。そしてVOCの放散量に最も影響を与えるのは、主に固化成分(バインダー)である。この部分に合成樹脂を用いていると、その種類や量によってはVOCを放散するケースもある。
漆喰の選び方
ここからは漆喰と珪藻土建材の原材料を見ていく。
本来の本漆喰は、消石灰や貝灰に角又などの海藻糊と麻スサを練り合わせたものだが、昨今の既調合漆喰においては、作業性改善などのために、炭酸カルシウムやメチルセルロース、合成樹脂、ガラス繊維やナイロン繊維などが添加されている。珪藻土建材と比べると調湿性能は高くない。
漆喰の内装下地は石膏ボードとなるが、アルカリ性が強いので直接塗ると表面の紙を侵食し、仕上げ材の変色や剥離につながる。そのため石膏プラスターや下地調整材が必要になる。
最近は薄塗りの西洋漆喰も人気だ。製品の中身は、
①石灰クリーム(生石灰に水をかけて沸化させた未消化の石灰)に骨材やつなぎの繊維などを混入したもの
②水を加えると消石灰中の不純物と結合して硬化する水硬性石灰を使用したもの
③消石灰に骨材・つなぎ材料や合成樹脂が入ったもの
の 3 種類に分類できる。石膏ボードに直接塗布できる製品もあるが、ジョイントにパテ処理は必要だ。
漆喰の多くは微量の合成樹脂が混入されている。また合成樹脂を使用していない製品についても、パテや下地調整材は必要であり、これらに合成樹脂が含まれていることが多い。
下地処理を含めて合成樹脂ゼロの仕様にするには、・・・・
この記事は定期購読者限定の記事です。続きは、『新建ハウジング別冊・プラスワン10月号/サステナブルな暮らしづくり百科/今どきのシックハウス対策 P.66~』(2019年9月30日発行)に掲載しています。
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