会津建設(福島市)は、社員73人中24人が社員大工で、常用(専属)の大工10人を加えると、じつに34人もの大工を擁する工務店だ。毎年コンスタントに高校生を採用し、“現場で教える”を基本として、中堅どころの大工を中心に、若手大工の育成に取り組んでいる。年間の育成スケジュールや給与体系をしっかりと構築し、現代の若者が働きやすい環境づくりにも力を入れている。
※この記事は、『新建ハウジング別冊・プラスワン11月号/工務店が事前にやるべき風害対策を考える』(2019年10月30日発行)をデジタル配信用に再編集したものです。
60代のベテランもいるのに、なぜ中堅が親方なの?
親方を熟練大工と若手大工のバランサーとして位置づけている
40代、50代の中堅は、熟練大工と若手の、ちょうど中間に位置する年代(どちらとも約20歳の差)。つまり「熟練大工と自分の関係」を、「自分と若手の関係」に置き換えることで、若手の気持ちが想像しやすくなり、どちらにとっても等しい関係性を築きやすいのだ。
1年間は社内でみっちり修行
社員大工24人のうち13人が「中堅」(平均43歳)で、11人が「若手」(平均20歳)。常用大工は60歳前後の熟練者がそろう。中堅が親方となって若手を指導していくのが、同社の大工育成の基本的なスタイルだ。
若手大工は、入社後1年間は育成スケジュールに沿って、社内で親方から指導を受ける。最初の5カ月間は、大工道具の使い方や墨付け、継手・仕口の加工、伏図の描き方を習う。6カ月目からは、実際の現場と同様の作業を行う実習に取りかかる。
その間も、少しずつ現場に出して手伝いをさせる。11~12カ月目からは本格的に現場に出し、建方や造作、墨付けを手伝わせる。2年目以降は、親方のもと、大工として実戦に加わっていく。社長の芳賀一夫さんは、大工の育成について「実戦で覚えさせることが必要。やってみないと良し悪しがわからないから」と話す。
現場での育成を強化するため、「応援モニター施主」のプロジェクトもスタート。入社5年未満の大工が中心となって、実際に顧客へと引き渡す住宅を建築する。顧客は、工期が通常より長くなる代わりに、工事費の割引を受けられる。
若手大工はどう採用しているの?
「大工になりたい」高校生に存在を知ってもらう
大工として入社するのは、ほとんどが地元の工業高校の卒業生。「大工になりたい」高校3年生に、就職先として視野に入れてもらうための「ロビー活動」が大切だと芳賀さんは言う。県内の工業高校を対象にした就職説明会には必ず参加し、大工のやりがいや、反対に大変なこと(残業や休日出勤がある、顧客から厳しい言葉をもらう、など)もきちんと伝える。
変えるべきは親方の意識
基本的に指導は親方に任せてはいるが、「親方と若手の相性」には気をつかっている。相性が悪いと感じたら、1年単位で教わる親方を変えることもあるという・・・
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この記事は、『新建ハウジング別冊・プラスワン11月号/工務店が事前にやるべき風害対策を考える』(2019年10月30日発行)P.54~に掲載しています。
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