木材を外部に用いるのは外観を特徴づける点からも有効だ。一方で耐久性を保ち、メンテナンスに配慮する必要もある。機能性と意匠性を両立する、山口工務店の山口雅和さんの手法を紹介する。
※この記事は、『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン10月号/健康・エコ 木の力を再考する』(2020年9月30日発行)をデジタル配信用に再編集したものです。
メンテナンスフリーのデッキ
山口さんはリビングなどの掃き出し窓の先にウッドデッキを設け、室内と外部をつないで開放感をもたせる設計が多い。ウッドデッキは水平に木板を設置するため雨をまともに受けて水が滞留しやすいため、木板が早期に傷みやすい。一般にはハードウッド(南洋材)や木粉と樹脂の押出し成形版が多用される。これらの材は夏場に熱を蓄えて表面が熱くなり、裸足で外に出られなくなる。また、南洋材は材質が固く、ビスを打つのに下穴が必要となり、ささくれも出やすい。そして押出し成形版は木材の質感も乏しい。
そこで山口さんは高温処理木材を採用している。木材を窯の中に入れて220℃以上の高温で木材を処理し、腐朽菌のえさとなるセルロースやヘミセルロースを変性させて防腐防蟻性能を高めた材料だ。熱を加えたことで表面が黒っぽくなっているが、時間経過とともに通常のスギ材と同様にグレーに退色していく。高温処理木材は温度で材質が変化して脆くなっているため、通常のデッキ材より短い根太ピッチ(幅105 ・厚さ30mmの場合で600mmピッチ)が必要になる。また現場で細かい細工をすると欠けることがある。
高温処理木材は「サーモウッド」や「エステックウッド」といった商品名で流通している。どちらも規格品だ。山口さんはスギのエステックウッドを採用している。サーモウッドより大引や束などの寸法体系が山口さんの設計になじむためだ。30mm厚の材を無塗装で用いている。水が滞留する可能性のある束の木口面や大引とデッキ材の接触面に片面タイプの防水テープを貼って水が入るのを防いでいる。
エステックウッドはデッキ材として高価な部類になる。2坪のウッドデッキでレッドシダーなどより5万円程度材料費が嵩むが無塗装でも耐久性が高く、塗り替え不要なのでトータルコストは安い。同社の営業圏である新潟県は多雪地帯で冬の間ウッドデッキは雪に埋もれる。その間、デッキ材は水分を吸って腐りやすくなる。何年かこれを繰り返して朽ち果てるウッドデッキが少なくない。エステックウッドならそうしたリスクを回避できる。
実際、竣工後10年近く経過したエステックウッドによるウッドデッキを調査すると、大引や束を含めて健全だ。ただし、通常のスギ材と同じく夏目は削れてうづくり状にはなってくる。
ウッドフェンスの工夫
山口さんはエステックウッドをウッドフェンス(板塀)にも用いている。横板には幅90mm、厚さ20mmの材を20mmの隙間を開けて張っている。20mmという隙間の寸法は閉塞感を感じさせず、往来や隣家の視線を防ぐ上で適切な寸法だ。笠木にも同じ寸法のエステックウッドを水勾配を取って設置している。笠木はエステックウッドあらわしでも問題ないが、フェンス本体より断面減少(肉やせ)が大きい。最近は念のために金属笠木を被せている。
ウッドフェンスの固定方法は以下の通りだ。まず溶融亜鉛メッキでドブ漬けにしたL 型アングルを基礎ブロックに固定する。そのL型アングルに・・・・・
【ほか写真26枚、立面図・断面図など4点】
この記事は、『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン10月号/健康・エコ 木の力を再考する』(2020年9月30日発行)P.~52に掲載しています。
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