シックハウスは、「住宅のトレンド」でとらえるべきではないテーマだ。「基準を満たす建材さえ使っておけばだいじょうぶ」と、形躯化しつつある業界の認識を問う。本コーナーでは「“いまどきの”シックハウス対策」と題し、建材や素材の検証をアプローチとしながら、改めて真に住む人の健康に寄り添う家づくりのあり方を見つめ直す。
シックハウス対策として用いられる内装材として最も一般的なものの1つがムク材だ。厚労省が室内濃度指針値を策定している13物質のうち、ムク材から放散されるのはホルムアルデヒドとアセトアルデヒドのみ。安全性の高い建材と言える。
ただし、木材からVOCが放散されないわけではない。針葉樹からはα・ピネン、δ・カジネン、ヒノキチオールなどのテルペン類が、広葉樹ではヘキサナールやペンタナール、エタノール、酢酸などのアルデヒド類が放散される。
VOCが少ないのはモミ
総合的なVOCの放散 (TVOC)は樹種によって異なる。「建材に用いられる範囲では、広葉樹の方が臭いが少なくTVOCも低い傾向にある。針葉樹は臭いが強いものが多く、TVOCが高めの樹種が多い」と大沼さんは指摘する。
細かく見ていくと 葉樹のなかでもTVOCの差は大きい。モミやカラマツ、トウヒなどの樹種は、森林総合研究所の実験からTVOCが非常に少ないことが分かっている。逆に多いのはヒバやヒノキだ。木材のVOCは竣工から数年を経ても低濃度で放散は続く。VOCに反応しやすい建て主の場合、樹種の選定に注意が必要だ。
「TVOCの物差しとしては臭いが有効だ。サンプルの臭いを嗅いでもらうほか、枕元にサンプルを置いて一晩過ごしてみて体調に変化がないかなどを試してもらうとよい」と大沼さんはアドバイスする。
塗料や接着剤には何を使うか
アセトアルデヒドにも注意が必要だ。ホルムアルデヒドと同様にシックハウスの原因となる物質の1つであり、室内濃度の指針が示されている。針葉樹ではスギやカラマツ、トドマツなど、広葉樹ではヤチダモなどに含まれている。
このアセトアルデヒドは、実際の住まいの調査において、ほかのVOCより濃度が圧倒的に高くなる例が多数報告されている。森林総合研究所の研究から判明した、アセトアルデヒドの発生原因は2つ。1つは木材に微量に含まれるアセトアルデヒドが放散するケース。もう1つは・・・
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この記事は、『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン10月号/サスティナブルな暮らしづくり百科』(2019年9月30日発行)P.64~65に掲載しています。
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