シックハウスは、「住宅のトレンド」でとらえるべきではないテーマだ。「基準を満たす建材さえ使っておけばだいじょうぶ」と、形骸化しつつある業界の認識を問う。ここでは、「“いまどきの”シックハウス対策」と題し、建材や素材の検証をアプローチとしながら、改めて真に住む人の健康に寄り添う家づくりのあり方を見つめ直す。シックハウスに関心が高い建て主にどのように接して、どのような情報を伝えるか。ポイントを抽出してお伝えする。
シックハウスが問題になったのは1990年代後半だ。そこから自然素材ブームが起こり、ホルムアルデヒド放散等級が定められ、24時間換気が義務付けられた。これを契機にシックハウスの問題は沈静化。現在、シックハウスを強く意識している実務者は少なく、「F☆☆☆☆の建材を使っていれば問題ない」と考えている人が大半だ。
だが建て主の意識は実務者とは大きく異なる。昨今の子育て世代は、家族のなかにアレルギーの人がいるケースも目立ち、化学物質過敏症の人もいる。さらにスピリチュアルブームの影響から、反自然的な存在である化学物質は排除すべきと考える人も一定数存在する。先鋭化した自然素材志向の工務店の影響もある。一部の工務店は建材の効果を誇大に謳ったり、スピリチュアリズムと結び付けてオカルト的な効能を訴える。こうした事情が絡み合い、建て主にとってシックハウスは、今でも新鮮なトピックであり大きな関心事なのだ。
建て主への接し方
では、シックハウスや自然素材に関心が高い建て主とどう接すればよいのか。シックハウス対策に詳しい自然派ライフ住宅設計(新潟市)の大沼勝志さんは「まずは偏った情報や考え方を解きほぐすことが大事だ」と主張する。
こだわりが強い建て主は「接着剤ゼロ」など実現が難しい要求をぶつけてくる。こうした要求を言下に否定せず、製品などを調べた上でサンプルなどを取り寄せ、建て主が要求した仕様のデメリット(機能不足、工期延長、高額など)を淡々と伝える。その上で「お勧めしませんが、デメリットを許容するなら実施は可能です」と伝える。「こうしたやり取りに時間をかけることで信頼を獲得でき、工務店側からの提案を受け入れてくれるようになる」と大沼さんは説明する。
建て主へ伝えるべき情報
建て主とやり取りする際に、伝えるべき情報がある。まずは化学物質と自然素材の関係である。「シックハウス対策 =F☆☆☆☆」が短絡的に過ぎるように「シックハウス対策 = 自然素材」も短絡的だ。シックハウスは・・・・
この記事は定期購読者限定の記事です。続きは、『新建ハウジング別冊・プラスワン10月号/サステナブルな暮らしづくり百科/今どきのシックハウス対策 P.61~』(2019年9月30日発行)に掲載しています。
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