帝国データバンクは3月8日、発生から11年を迎えた東日本大震災に関して、直接的・間接的に震災が影響したことが要因だと判明した「東日本大震災関連倒産」(負債1000万円以上、個人事業主含む)の発生状況をまとめ公表した。発生から2022年2月までの「東日本大震災関連倒産」は累計 2085 件、負債総額は累計1兆7189億円。「被害甚大地域」に本社を置いていた5004社のうち、事業継続している企業は64.8%で、このうち売上高が震災前の水準に「回復した/届いた」企業は65%にとどまっていることが分かった。
「東日本大震災関連倒産」は震災1~5年目に毎年100件超発生したが、6年目以降は本格化した震災復興工事や生活再建などを背景に年々沈静化。2022年(2021年3月~2022年2月)は24件と過去最少を記録した。ただし、地震や津波による建物の倒壊・喪失など「直接被害型」の倒産が占める割合が3年ぶりに50%となった。政府・自治体の経営支援も活用して工場や事業所などハード面は再建したものの、取引先の廃業、需要の低迷、さらに、コロナ禍の影響で売り上げが当初想定よりも回復しないなどの理由から、借入金の返済負担が重くのしかかり、最終的に経営が破綻するケースが多くみられるとしている。
業種別では「東日本大震災関連倒産」が最も多かったのは旅館・ホテルなど「サービス業」の467件。次いで水産加工業など「製造業」426件、生鮮魚介卸など「卸売業」の424 件と続く。
建設業は累計291件で4番目に多い。建設業は1年目に84件、5年目までにさらに183件、11年目までにさらに24件増加している。
震災発生時点で「被害甚大地域」に本社を置いていた5004社について調べたところ、2022年2月時点で「事業継続」している企業は3244社(64.8%)だった。震災2年後の72.8%をピークに低下傾向で推移している。また、「休廃業・倒産」などで事業実態が消滅した企業は1760社(35.2%)にのぼる。
岩手、宮城、福島の3県の「被害甚大地域」にあった企業で事業継続しているのは、岩手70.3%、宮城72.0%、福島:43.9%。ただし、宮城・岩手両県では緩やかながら低下傾向が続いている。一方、福島県では岩手・宮城両県に比べて事業再開した企業が増加傾向にある。
また、事業継続が確認できている被災地企業約 3000社の売り上げをみると、売上高が震災前(2010 年度)の水準に「回復した/届いた」企業は全体の 65%にとどまり、被災地企業の3社に1社は震災以降、1度も売上高が震災前の水準に届いていなかった。
調査結果について帝国データバンクは、「震災後長期間経過しても経営の立て直しが容易ではない事実が浮かび上がる」と指摘。「12年目以降も被災地を中心に震災に起因した『息切れ型』の倒産増加も否定できず、動向にはなお注視」が求められるとしている。
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