屋根の設計施工に詳しいエーシャギー(東京都江東区)代表の安達智さんに屋根まわりの劣化状況や耐久性を増すための手法について聞いた。今回はセメント瓦と化粧スレート、金属屋根の概況に加え、屋根に欠かせない雨樋についての知見を紹介する。
セメント瓦の耐久性
セメント瓦は乾式コンクリート瓦と厚型スレートに分かれる。セメント瓦はセメントと水、骨材を混合して押出し成形後、防水層として着色スラリーと呼ばれる無機質の着色材を2~3mm厚塗布し、さらにクリア塗装を施した製品だ。着色スラリーは少しずつ劣化し、15年前後でほぼなくなるが、基材の密度が高いため吸水性が低く、耐久性は保っている。
「この材料では『モニエル瓦』という製品が有名で、耐久性が高いことで知られている。この製品は50年はもつだろう」と安達さんは評価する。
セメント瓦のメンテナンス用として専用の下塗材が塗料メーカーから製品化されているが、耐久性を回復するというより美観を整えるための材料だ。
厚型スレートはセメントと水、砂利などの骨材を混合して型枠で高圧プレス成形した材料である。この材料の耐久性は高くなく、屋根のリフォームに携わる人たちの一部で「ハムナプトラ」と呼ばれている。築30~40年の厚型スレートを撤去する際に持ち上げると、手のなかで崩壊するためだ。セメント瓦の葺き方は前号で紹介した本瓦に準ずる。また劣化や破損の原因なども本瓦に準ずる。いずれの屋根材も多くの材料が廃番になっているので、部分補修は難しい。築30年を経過したセメント瓦(特に厚型スレート)は、新たな材料に葺き替えるのが現実的だ。
化粧スレートの耐久性
近年、金属屋根に少しシェアを奪われたが、化粧スレートは現在でも大きなシェアをもつ屋根葺き材だ。支持されている理由は価格。あらゆる屋根葺き材のなかで、材工の価格が最も安価な材料である。「1990年代頭ごろ、材工のm2単価は4200円だった。それが今は2800円。金属屋根の立平葺きとの競争もあり、材料価格も手間賃も下がっている」と安達さん。化粧スレートの需要は変わらないが、材料の中身は2000年に入って以降、大きく変わった。最大の変化は補強繊維の材質だ。かつての化粧スレートにはアスベストが10~15%入っていた。アスベストは材料のじん性や耐水性を大幅に向上させ、耐久性を高めていた。
これをノンアスベスト化したことで、かつてほどの耐久性ではなくなった。またノンアスベストに移行して間もないころの製品のなかには、製法の関係で経年変化により層間剥離を起こしやすいものや原材料の関係で固くて割れやすいものがあった。後者に関しては施工中に屋根業者が屋根材を踏んで割ってしまう踏み割れが多かった。「割れた直後はヒビが表面に出てこないことが多く、気づかずに放置された事例が多いと思われる」と安達さんは分析する。
化粧スレートの不具合で最も多いのが、強風で棟板金が飛ばされる事例だ。また亜鉛鉄板の時代の芯木あり瓦棒葺きも毛細管現象により給水して芯木などが腐食し、軒先からめくり上げられて、屋根材が飛ばされる事例が多い。
化粧スレートは築15年ごろに塗り替えるケースが多い。「役割としては耐用年数を延ばすためというより美観を整えるためのものだ。基本的には30年ごとに葺き替える材料だろう」と安達さんは話す。
金属屋根の耐久性
昨今、全国的に増えてきているのが金属屋根だ。かつて金属屋根には亜鉛鉄板が用いられた。そこからメッキの仕様が向上し、現在ではアルミニウムと亜鉛の複合メッキが施されたガルバリウム鋼板が主流となっている。アルミの耐食性と亜鉛の防食作用により、・・・・
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この記事は定期購読者限定の記事です。続きは、『新建ハウジング別冊・プラスワン1・2月号/木造住宅「耐久性向上」のレシピ/屋根材と雨樋の耐久性 P.52~』(2020年1月30日発行)に掲載しています。
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