発泡系断熱材やグラスウールに替えて、木質繊維断熱材を使用するなど、自然素材で暮らしの快適さを追求しながらパッシブデザインの家づくりを手掛けるヴァルト(長野市) は、長い期間にわたって快適な温熱環境や省エネ性を保っていくためのポイントを「Breathability(ブレサビリティ)=呼吸性能・調湿機能」とする。同社社長の小野治さんにブレサビリティの考え方や実践手法について聞いた。
※この記事は『新建ハウジング・2020年12月10日号』(2020年12月10日発行)5面をデジタル配信用に再編集したもので、掲載内容は取材時のものです。
日本の気候風土で省エネルギーの住宅を設計する場合、なくてはならないのが湿気対策だ。伝統的な日本建築では、湿気が理想的にコントロールされてきた。が、近代建築においては、高気密を目指すため湿気を通過させない防湿層を作ることで、壁体内に湿気が侵入した場合、閉じ込めることになる。外皮に幅1mm・長さ1mの隙間が生じると、1日で360gの水分が壁体に侵入する。これが構造体そのものの劣化につながり、建築物の解体時期を早めることになる。
以前から新築・改修の設計・施工において、建物と居住者の健康に大きな影響を及ぼすブレサビリティが重要なポイントだと考えてきた。ブレサビリティを備える典型的な材料は自然素材であり、ヴァルトの家では木質繊維断熱材を使用することで、環境に優しく耐久性や省エネ性に優れる住宅を実現している。住宅の耐久性が高まり新築から解体までのサイクル(期間)が仮に2倍の長さになったとすれば、建材使用量や施工などにかかる労力を半分に削減したことと同じになると考えることができる。
断熱材が鉱物系(グラスウール・ロックウールなど)の場合、断熱材に対して水分量のわずかな上昇で断熱性能が低下すると考えている。水の分子が断熱材の隙間に侵入し、熱橋(ヒートブリッジ)を引き起こすからだ。日本では、断熱材の性能を算出するとき、湿度をほとんど考慮していないが、ドイツなどヨーロッパの断熱先進国では・・・・
続きは『新建ハウジング・2020年12月10日号』(2020年12月10日発行)5面に掲載しています。
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