今回は材木店から工務店へと業態転換を成功させた島田材木店(茨城県石岡市)を紹介する。同社はパッシブハウスを切り口に受注を安定化し、さらなる顧客の拡大を狙っている。
※この記事は、最少人数で安定した受注を得ている工務店を取材し、経営手法や人気の秘密を探る新建ハウジングの人気連載「n(ナノ)工務店の経営術」の中から、2020年2月20日号・Vol.20をデジタル配信用に再編集したもので、掲載内容は取材時のものです。
島田恵一さんは茨城県石岡市生まれの53歳。家業である島田材木店の2代目だ。慶應義塾大学法学部卒業後に大手ゼネコンに入社して財務を担当。それから3年後、材木店が父母2人の体制になったのを機に実家に戻った。
日常業務の傍ら島田さんは頻繁に現場に通い、顧客である大工から用材や納まりを学んだ。彼らとやり取りするなかで、建物の知識があれば売り上げが伸ばせると島田さんは気づき、29歳のときに2級建築士の資格を取得。建築士事務所を開設して確認申請などのサポートを始めた。だが時代の変化が島田さんを襲う。建て主が建材や設備を選択する家づくりが主流になったことで、建て主対応が苦手な大工の受注が激減したのだ。
大工が仕事を取れないと材木店の仕事は成り立たない。島田さんは材木店という業態が時代とずれてきたことを悟り、注文住宅を事業の柱にしようと考えた。だが現実は厳しかった。「自然素材と手刻みの家づくりを訴求して受注を図ったが、年1~2棟の受注がやっとだった」と島田さんは振り返る。
悪戦苦闘のうちに5年が過ぎた。手刻みの家は木の匂いやつくりのよさを褒めてもらえたが、住み心地の反響がなかった。モデルハウスもない小さな材木店が受注を伸ばすには、もっと明確な売りがいる。島田さんはそう考えた。
パッシブハウスで勝負をかける
そんなときに島田さんは自立循環型住宅の講習会に参加。住宅の温熱環境や光熱費が計算で予測できることに興味をもった。もともと日本の家が住み継がれずに取り壊される原因の1つに不快な住環境があると感じていたこともあり、その後も温熱関連の講座を受講した。そして次世代省エネルギー基準における1地域の仕様で家をつくろうと考えた。
そのときの課題は2つ。1つはコストだ。自然素材の断熱材にこだわると、工事費が膨む。もう1つは、省エネや快適性を言葉で伝える限界だ。快適性を体感できるモデルハウスの必要性を島田さんは感じていた。・・・・
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続きは『新建ハウジング・2020年2月20日号』(2020年2月20日発行)8-9面に掲載しています。
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