前回はナノ工務店の強みと課題についてまとめた。今回はその内容を踏まえ、ナノ工務店の差別化戦略とそれに基づく営業戦略についてまとめていく(前編はこちら)。
ナノ工務店が年間にこなせる仕事量は新築なら5棟が限界だ。この規模の受注を定期的に得るには、大手・準大手工務店との競合になりにくいニッチ層に特化した活動が良策だ。ボリューム層を狙うと問い合わせや見積り対応に振り回される。その割に成約率が低く、クレームも生じやすい。
DIY志向の顧客とリノベ顧客を狙う
ニッチ層とは業界の家づくりのルーティンに馴染まない顧客のことだ。その代表格がDIY志向の顧客だ。大手や準大手はまともに取り合わない客層なので、競合はほぼ皆無だ。
この客層を狙うには、DIY映えしやすい開放的な空間構成や木板・漆喰の多用などの設計の工夫と未完成で引き渡してDIYで完成させるための仕組みづくりが重要だ。DIY前提での契約の仕方や住宅ローンの組み方、確定申告や竣工検査のノウハウを確立すると、工期延長による入荷遅れやDIYや支給品のクレームのリスクを抑えた上で確実に受注できる。
もう1つがリノベーションの顧客だ。この分野はマンションと戸建てに分かれる。前者はここ10年で、標準仕様と標準プランのなかから選択する定額制が定着した。このルーティンから外れた顧客が狙い目となる。代表例が「木の家リノベーション」だ。自然素材や大工造作、木造建具を全面に打ち出し、オーダーメイドの希少性を訴求する。併せて断熱性能の向上や設備配管の更新などの性能向上を組み込むと、差別化提案としてさらに強くなる。「木の家+性能向上リノベーション」の工事費は1500万円以上と新築に近い。しかも打ち合わせ期間と工事期間は新築よりかなり短いため、売上や利益率を保ちやすい。
戸建てリノベーションは既存建物の現況のバラツキが大きいため、マンション以上にルーティン化が難しい分野だ。それにもかかわらず不動産系の大手が定額制を展開している。これが可能なのは余裕をもった見積りとしつつ耐震や断熱などの躯体に関わる工事を避けているためだ。
ナノ工務店からするとそこが狙い目になる。大手が避ける躯体に手を入れる間取り変更と性能向上を組み込んだリノベーションを大手と同等以下の金額で提供することで安定的な受注が・・・・・
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続きは『新建ハウジング・2021年2月20日号』(2021年2月20日発行)P5〜に掲載しています。
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