品確法の性能表示制度の断熱等級5~7が新設される。最上位の断熱等級7はHEAT20のG3相当。この高性能な躯体をいかに実現し、どう生かすか。新潟県三条市を拠点に活動する設計事務所、オーブルデザインの浅間英樹さんに「G3住宅」の設計手法について聞いた。
G3住宅に求められるもの
◉必要な断熱性能は地域性で大きく変わる。太平洋側は日中に晴天だと暖房負荷は少ない。ある程度の期間は部分間欠暖房で快適性を保てる
◉一方、日本海側は冬の日射時間が少ない。全館連続暖房でないと快適な室内環境を保てない。等級7(G3)仕様とする必然性がある
◉G3仕様になると工事費が上昇する。資産価値の保全としてより長寿命が求められる。防蟻や結露防止、防腐、カビ対策、窓の交換可能な設置方法などが必要になる
◉特に重要なのがカビ対策。木材などの防カビ成分は経年変化で減少するため建物が古くなるとカビが生えやすい。健康を損なうほか、臭いが鼻について古びた印象が強まる
➡カビの発生が建て替えの理由の1つになる。それを避けるには全空間で湿度65%以下にコントロールすることが重要
<大野町の家>
新潟市に建つ住宅。UA値 0.23のG3住宅。高耐久な高い建材・設備の採用、維持管理や部分交換のしやすさ、防露や防腐、防カビなど長寿命化のための手法が盛り込まれた高性能住宅
◉G3になると付加断熱とトリプルガラスが必須となり、天井断熱の厚みも増すため建物の重さが大幅に増加。重量のあるセルロースファイバーを用いるとより重くなる
➡壁量計算だと実質的な耐力壁が不足する可能性がある。許容応力度計算が望ましい
◉22条地域では延焼のおそれのある外壁に準防火性能が求められるなど都市部では付加断熱の構成に制限が掛かる。また準防火地域・防火地域では防火窓が求められるが、Low-Eトリプルガラス+樹脂サッシの製品は高価で種類が少ない
➡付加断熱と面材、外壁材などの組み合わせを確認し、適宜個別認定なども利用する。窓はシャッターを用いてコストを抑えることも検討する
建物上部は水平構面が確保しやすい天井断熱で
◉建物上部の断熱は繊維系断熱材で400~450mm厚程度の厚みになる。コスト性と桁上に構造用合板を張り、水平構面を確保しやすいことから天井断熱を採用
➡桁上に張る構造用合板には穴を開けて透湿抵抗比を下げる。屋根断熱(勾配天井)は水平構面が取りにくいので基本的に採用していない
◉断熱材はセルロースファイバーを中心に採用。吹き込み用グラスウールでもよいが、引き渡し初期に飛び散った細線維が階間などから室内に侵入することがあるので採用は避けている
◉天井吹き込みのセルロースファイバーは・・・・・
【残り2315文字、平面図・矩計図など12点、写真40枚、表・グラフ8点ほか】
続きは『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー3月号/最新事例に学ぶ高性能住宅【設計施工】セオリー』(2022年2月28日発行)P34~49に掲載しています。
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