新建ハウジングが運営する工務店向けオンライスクールサイト「チカラボ」から、工務店の経営者や実務者に役立つ記事をお届けします。
今回は、青木隆行さんの「工務店リアル経営」ルームからの記事です。
株式会社ソルト(SOLT.)代表取締役。経営アドバイザー/MBA。1972年・山口県防府市生まれ。2002年~2019年まで、株式会社銘建(MEIKEN)代表取締役。さくら銀行(現三井住友銀行)を経て、家業であった工務店を事業承継。銘建では、『ライフスタイル型工務店』『一気通貫経営』を提唱。事業規模を2.7億円から23億円へ拡大。2016年より多角化(機能回復型デイサービス・不動産賃貸・民泊・食品物販)展開。2019年M&Aにより事業譲渡。現在は多角化した会社を経営しながら、経営アドバイザーとして全国の工務店・中小企業への支援を行っている。
[第14回] 事業承継の手法と課題 (1/2)
[第14回] 事業承継について①(全2回)
SOLT.の青木隆行です。前回(と前々回)は、工務店に必要な長期安定経営の視点を解説し、そのヒントとして「日本的経営」がなぜフィットするのかを説明しました。
今回と次回は、事業承継について解説していきたいと思います。
一言で事業承継と言っても、いくつかの手法があります。また、事業承継は人の感情も入り混じってすんなりと行かない事も多いようです。今回は、私自身が先代から事業を受け継ぎ17年工務店経営をした後に、M&Aをして事業譲渡をした経験も踏まえながら、事業が継続することの重要性と事業承継について考えてみます。
1.事業承継の手法と課題
まず(残酷な言い方かもしれませんが)経営者の命には限りがあります。事業が継続していればいつか必ず来るのが事業承継です。現経営者の皆さまはこの現実をしっかり受け止めて、事業承継のタイミングやイメージを明確に持っておかれるべきでしょう。現在、全国の社長の平均年齢は62.49歳だそうで、社長の高齢化は年々進んでいるそうです。高齢化と共に経営判断が鈍ってくる事も問題とされていますが、それよりも問題なのは中小企業の2/3が後継者不足に悩んでいる事です。後任へ引き継ぐ責任を果たす事は、今をうまくやっている事よりも大切だとも言えます。
さらに工務店業界の事業承継にフォーカスして考えてみましょう。業界の外部要因を考えると住宅着工棟数の減少が挙げられます。国内は少子高齢化が進み1995年に163万戸あった住宅着工棟数は2020年に81万戸と、25年で半減しています。またこの数十年では法令規制の強化も進んでおり、以前は許されていた事も法令違反となるケースも多く、今後も住宅性能の向上やコンプライアンス順守、SDGsの推進なども必要です。併せて人手不足。特に現場監督の減少は顕著であり採用難易度は高まる一方です。顧客側もインターネットの普及と共に得られる情報量は工務店とほぼ同等となっており、デザイン・性能など顧客対応への要望も高まっています。このように、経営難易度は益々高まっていくでしょう。すなわち、事業承継の難度もこれまで以上に高まっていくと考えられます。
一般的に事業承継には、①親族内の承継 ②親族外(従業員など)の承継 ③第三者への承継(M&A) ④上場の4つのケースがあります。次章でそれぞれのメリットとデメリットについて見てみます…
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