南国・鹿児島における断熱改修の事例を紹介する。リノベーションに力を入れる大城代表・大城仁さんの自邸であり、2戸をつないで1戸にした「ニコイチ」リノベの意欲作だ。その過程と住み心地を聞いた。
大城仁さんが代表を務める大城は鹿児島市にある建設会社。長年曳き家を中心に活動してきたが、近年はリフォーム・リノベーションに取り組み、一昨年より断熱改修にも力を入れている。南国・鹿児島と断熱は結びつきにくいが、実は鹿児島はヒートショックによる死亡者が全国的に見ても多い県だ。また、冬の平均気温こそ高めだが、寒暖の差が激しく、夜間や朝方は冷え込む。「冬の期間が11月半ばから2月末までと短いため、多くの人は寒さを我慢して暮らしている」と大城さんは説明する。
大城さんもこの業界に入ったころは断熱・気密をそれほど重視していなかったが、実家を出て中住戸のマンションに暮らした際に暖かい環境に暮らす心地よさを体験し、考え方が変わった。そして、地球温暖化への関心からCO2抑制手法となる高断熱化に興味をもち、自身の仕事であるリフォームに生かせるのではないかと考えるようになった。
そこで、大城さんは2018年にエネルギーまちづくり社主催の断熱ワークショップに参加。断熱の原理原則と改修方法を学ぶ。それから間もなく、地元の都市ガス会社によるマンションの断熱改修プロジェクトに施工会社として参加。UA値0.41という温熱環境を実現し、同じマンション内の無断熱の空室と比較して外気温0℃時の体感温度が3.1℃高まり、電気使用量が30%減ったという体験をした。
この経験から、大城さんは断熱改修はリノベーションに欠かせないと確信。「無断熱の家は罪。それをつくり続けた工務店や設計事務所の責任は大きい」との思いを強くした。
ダブルリビングのプラン
本格的な断熱改修を経て、2019年に大城さんは自宅のリノベーションに着手する。既存建物は3階建てで1階が自社オフィス、2・3階が住居だ。そのうち2階の2つの住戸を1つにまとめて「ニコイチ」にする大胆なリノベーション計画だ。
ニコイチに際しては戸境壁を撤去するのが一般的だが、耐震上の理由からここでは採用できなかった。そこで戸境壁は残し、既存の外廊下の一部を取り込んで室内廊下として2つの住戸をつないだ。既存の外廊下を覆う外壁は木軸で製作し、板張りとした。ニコイチ化により、床面積は145m2に増えた。大城家は夫婦と子供3人の5人家族だが、かなりゆとりがある。この広い空間を断熱改修により性能の高い外皮で覆うことで、快適性と省エネルギー性を保ちながら開放的なプランが可能になる。・・・・
【残り2900文字、図面2点、写真44枚など】
続きは、新建ハウジング別冊・プラスワン2020年3月号(2020年2月29日発行)/住まい手に聞く「リフォームの本音」P30~37に掲載しています。
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