住宅性能表示に断熱性能等級6・7が設定されるなど、高断熱化が進んでいる。断熱性能が高まると日射などの自然エネルギー利用がしやすくなる。一方で自然エネルギーは低密度でバラツキが大きく設計に組み込むのが難しい。森林文化アカデミー准教授・辻充孝氏に自然エネルギーの活用方法の基本について聞いた。
Q. 蓄熱材はどのように選定すればよいのか
A.コンクリートや石材、土壁など熱容量が大きく、熱伝導率が高い素材を用いる。最近は潜熱蓄熱材(PCM)という熱容量が大きな材料も開発されている
◉建築研究所の「住宅の一次エネルギー量消費算定プログラム」では蓄熱の効果を評価できる。そのためには熱容量170KJ/m2K以上が必要だとしている[図1]。この数値を満たすには、土壁の場合、建物のほぼ全面に採用する必要がある
◉この数字は過剰だという意見もある。6地域などでG2程度の躯体性能がある場合、120KJ/m2K程度で効果を発揮するという実務者もいる。
◉蓄熱材については、熱容量(容積比熱)が大きく、熱伝導率が高い素材が向いている。熱伝導率が高いと熱がすぐに移動するので蓄熱材にどんどん溜め込んでくれる
◉それらを満たす素材としてコンクリートや石材、土壁などが用いられる。また最近は潜熱蓄熱材(PCM)という熱容量の大きな素材が注目されている[図2]
◉この素材は特定の温度で固体から液体(または固体から液体)に変わる。そのときの潜熱を利用して溜め込む。適切な温度の温度範囲で固体から液体(または固体から液体)に変わるように設定すれば、少ない容積で効率よく熱エネルギーを利用できる。現在、左官材に練り込む商品やパッキン材のように根太の間に施工する商品などがあるが普及には至っていない
◉スギなどの厚板の蓄熱効果に期待する実務者がいるが、スギは熱容量が少なく、熱伝導率も比較的低いため、蓄熱材には不向きだ
◉ただし、スギは熱伝導率が低いため、床に張ると足裏から熱が奪われる速度が遅く、冷たさは感じない。蓄熱効果とは異なるが体感上の利点はある
Q. 蓄熱材の厚みと配置はどう考えればよいのか
A.材料ごとに蓄熱材として有効に働く厚みが決まってくる。同じ容積であれば蓄熱材は薄くて面積が広いほうが効果が出やすい。熱が伝わりやすく、出入りもしやすいためだ
◉熱容量と熱伝導率のバランスなどから材料ごとに蓄熱熱材として有効に働く厚みが決まってくる。蓄熱部位として土間床などに用いられるコンクリートは、1600KJ/m2・Kと建築材料のなかでは熱伝導率が比較的高いこともあり、230mm厚の厚さまで有効に働く・・・・
【残り710文字、写真10枚、図表8点】
続きは『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン/環境問題・エコハウスのウソ・ホント』(2022年1月30日発行)P38~43に掲載しています。
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