小樽市に建つ築約50年の木造住宅を性能向上リノベーション。室内には住まい手の家財が残され、当時のインテリアを保つために主に外側から施工し、断熱気密性能を一新させた。この改修手法について、山本亜耕氏(山本亜耕建築設計事務所)、首藤一弘氏(丸三ホクシン建設)に聞いた。
※この記事は、『新建ハウジング別冊・プラスワン2019年8月号/リノベ・リフォーム工務店の一手』(2019年7月30日発行)をデジタル配信用に再編集したものです。
※資料提供:山本亜耕建築設計事務所
小樽に建つ1970年竣工の木造住宅。新築時より寒さに悩まされ続け、過去に幾度も断熱材の増し張りや、風除室、内窓の設置など部分断熱改修を繰り返してきたが問題の解決には至らず、むしろその都度別の部屋や部位などに新たな問題が生じてきた。このたび祖父の家を若い夫婦が引き継ぎ、寒さと光熱費の不安を根本的に取り除くために性能向上リノベーションを実施した。
断熱改修の概要
屋根と壁に関しては既存外皮を極力残し、上から新たな断熱層をすっぽり被せる方法を採った。床に関しては断熱気密性能が同時に得られる現場発泡ウレタンを使用。断熱改修のコツは部分の積み重ねではなく全体的な連続性へ意識を切り替えることだ。以下、詳細を見ていく。
①床の断熱改修
この建物は床下を車庫などに使うため、束を用いず軽量溝形鋼の大引で支えていた。大引の隙間に既存グラスウール(GW)を詰めて冷気を遮断し、押出法ポリスチレンフォーム(XPS)を挽き割って蓋をした上で現場発泡ウレタンを吹き付けた。
②屋根の断熱改修
当時気密という概念がまだ希薄で、断熱ラインもつながっていなかった既存の天井断熱から、連続性に優れた屋根断熱に変更。未利用空間の広い小屋裏には既存のGWを残したまま室内空間に取り組んだ。
施工手法だが、まず屋根材と防水を撤去。露出した野地板を厚手の防湿気密シートで覆う。防湿気密シートは部分的に切断した軒から外壁に下ろし、後で外壁の防湿気密シートと連続させる。防湿気密シートの上にビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)を3層に施工し、透湿防水シートで覆う。その上に通気垂木を設け、構造用合板と下葺き材を施工し、屋根材を葺く。断熱と通気・仕上げの分離により、屋根に浸水しても屋根と外壁の通気層を通り、外壁水切りから排水される。
③壁の断熱改修
壁の改修手法は北面とそれ以外で異なる。北面は外壁のモルタルを残した。まず土台と柱の状態を確認するために壁の上下に水平方向の切れ目を入れ、構造を露出させる。この状態で必要に応じて土台の交換や柱の根継ぎなどを行う。目視の結果、壁のGWが土台上端に密着していなかったため、切れ目から気流止めを詰め込み、壁内気流を止めた。
ポイントは切れ目を復旧する際に構造用合板を用いて土台と柱脚を所定の方法で連結すること。これにより金物接合と同等の効果が得られる。
次に既存モルタルの上から防湿気密シートを張る。防湿気密シートは屋根の防湿気密シートと連続させる。防湿気密シートの上には付加断熱下地となる206材を固定。防湿気密シートごとモルタルを挟み付けて固定することで既存モルタル壁が耐力壁として再生する。
206材の間にGW140mmを充填。通常、丸三ホクシン建設は発泡プラスチック系の外張り断熱が主体だが・・・・
【写真22枚、図3点】
続きは『新建ハウジング別冊・プラスワン2019年8月号/リノベ・リフォーム工務店の一手』(2019年7月30日発行)P66~に掲載しています。
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