寒冷地に比べ温暖な地域では、断熱の重要性が理解されにくかった。そもそも、消費者の関心は設備や内装に向きやすく、性能向上リフォームを提案しても反応は鈍くなりがちだ。そんな環境下で、中祥建設(岡山県倉敷市)は、新築にパッシブデザインを導入したことをきっかけに、リフォームでも「本質改善型」の性能向上リフォームに注力。室温などの実測データで提案に説得力を持たせ、顧客を大規模リフォーム・リノベーションに誘導することに成功している。
リフォームのあり方パッシブ手法で見直す
二代目社長の阪口英樹さんはパッシブデザインの手法を、野池学校(現:温熱カレッジ)や自立循環型住宅研究会(以下自立研)で学んだ。理由は「これまで自分たちが建ててきた家の温熱環境に納得がいかず、疑問を持ち始めたから」だという。その後、リフォーム・リノベーションにおいても、新築と同じように「本質的な改善」を優先し、ただの「化粧直し」にならないような提案を心がけてきた。
同社は2016年に開催された「自立研アワード2016」において、築35年の戸建て住宅の性能向上リフォームで優秀賞を受賞した。耐震補強と同時に、天井、壁、基礎の断熱改修や開口部の強化を行い、パッシブデザインを導入した結果、断熱性はQ値が11.01W/m2・Kから2.19W/m2・Kまで向上。ηAC値も6.8から1.5に改善した。
加えて、引き渡し後も室温や光熱費のデータを収集。暮らし方を細かくアドバイスして、より省エネで快適な暮らしになるようサポートを続けている。
あいさつ代わりに室温測定
施主のAさん(70代男性)から阪口さんに問い合わせがあったのは、2015年の2月のこと。Aさんは当時一人暮らしだったが、息子夫婦と同居することになったので、水まわりをリフォームしたいという話だった。
そこで阪口さんがA邸を訪れてみると、室内はかなり寒く、脱衣所には電気ストーブも置かれていた。この状況を見た阪口さんは、温湿度計を「名刺代わりに」とA邸に設置した。そして3日間の室温を測定した結果、リビングの室温は朝6時で5.3℃。阪口さんは室温の実測データをAさんに見せ、断熱改修を提案したところ、Aさんはその提案を受け入れた。
Aさんはその時点で既に2社から見積もりを取っていたが、温熱環境の改善を提案したのは阪口さんだけ。「他社にはない、本質的な要素の改善」がAさんの心に響いた結果、他社との競合に打ち勝って、受注獲得に結びついた
現況に合わせて適切な素材・工法を選ぶ
阪口さんが新築・リフォームを問わず断熱性の指標にしているのが「朝の室温が・・・・
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続きは『新建ハウジング別冊・プラスワン2019年8月号/リノベ・リフォーム工務店の一手』(2019年7月30日発行)P46~に掲載しています。
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