住友林業(東京都千代田区)はこのほど、英国の不動産開発業者Bywater Properties Limited(英・ロンドン)と合弁会社を設立し、ロンドンで木造6階建て環境配慮型オフィス開発事業に参画すると発表した。同社が住宅・不動産事業で欧州に進出するのは今回が初めて。総事業費は約4800万GBP(約74億8800万円)。着工は2022年9月、竣工は2024年4月予定。
同プロジェクトでは、建築時の炭素排出量を英国で一般的な鉄筋コンクリート造と比較して約80%削減するほか、木材の炭素固定量をオフセットすることで竣工時にカーボンネガティブになると試算されている。建物には、高遮熱性能の外壁や日射を防ぐブラインド、太陽光発電設備など省エネ・創エネ仕様を採用。再生可能エネルギー利用も組み合わせることで、建物使用時の炭素排出量を加算しても、約60年間ネットゼロカーボンを実現するとした。炭素計算は、英国の建築物環境性能評価基準に準拠。建物解体後も木材を再利用できる設計で、持続可能な森林から調達された木材であることを条件に、建物の生涯炭素排出量から木材炭素固定量を差し引くことができる。
建物内部の梁、柱、天井は、木肌を露出させ木の雰囲気やぬくもりを体感できる。隣接する緑豊かな公園側の空気を吸気し、室内空気を線路側に排気する換気システムや、開放感のある天井高などにより、快適な職場環境を提供する。ロンドン市内で再開発が進むテムズ川南岸のエリアに位置する木造建築物で、注目度の高さからすでに慈善団体や大学、医療機関などから入居の問い合わせがあるという。
同プロジェクトの先進的な低炭素建築計画が評価され、ロンドンの環境や生活に貢献するプロジェクトを表彰する「New London Award 2020」や優れた建築を表彰する「World Architecture Festival Award 2021」を受賞。また、環境認証の「BREEAM」、健康配慮型オフィス認証の「WELL」、スマートビルディング認証の「WIRED SCORE」で最高レベルを取得する予定。
同社は脱炭素社会の実現に向けて、ネットゼロカーボンの実現を目指す海外中大規模木造開発に取り組んでおり、昨年10月には豪州メルボルンでの15階建て木造オフィス開発事業に参画を発表。今回のプロジェクトはその第2弾となる。今後、豪州や欧州で先進的な環境対応や中規模木造の知見を深め、「ネットゼロカーボン建築」のグローバル展開を進めるとしている。
同社は、フィンランドのOne Click LCA社と、建物のCO2排出量等を見える化するソフトウェア「One Click LCA」の日本単独代理店契約を締結している。同プロジェクトにおいても、同ソフトウェアを使用した低炭素建築の計画が進行。同プロジェクトを通じて得られる最先端のエンボディード・カーボンの見える化や削減といった知見を活かし、日本市場のLCA普及に貢献していくという。
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