国土交通省は2月14日、不動産売買取引における重要事項説明書等の書面電子化の本格運用に向けた検証検討会を開いた。検討会では、昨年12月までの3年間に実施した書面電子化の社会実験について報告。今後の対応や留意事項などを審議した。具体的な実施方法をマニュアルなどにまとめ、5月頃までをめどに本格運用を開始する。
社会実験には119事業者が参加。実験後のアンケートへの回答者(宅建士と相手方の合計)は、賃貸1217件、売買216件。このうち実際に電子書面の交付を行ったのは、賃貸1052件、売買67件だった。
電子書面を活用した「IT重説」の手順は、まず重要事項説明書などを電子化し、メールなどで相手方に送信。事前に送付したファイルが改変されていないかを確認した上で、ビデオ通話などを利用して重説を行う。書類が改ざんされていないかの確認は電子認証業務サービス事業者を利用する。
実験後のアンケートによると、各自の機器・回線などを起因とするトラブルは多少あったものの、契約内容などへの影響は無かった。電子化にメリットがあると捉える人が相手方では8割近くに達し、このうち「電子書面の郵送時間が不要となることでスピーディーに契約できる」と感じた人は賃貸・売買ともに7割を超えた。
相手方の使用端末は、賃貸では78%が「スマートフォン」、売買では「パソコン」47%、「タブレット端末」37%の順に多かった。このうち約6割以上が、重説時に1台の端末で宅建士の説明と電子書面の両方を確認する方法を採用。あらかじめ送られてきた電子書面を紙に印刷して閲覧したのは2割弱だった。
電子書面の内容確認には支障がなかったものの、画面や文字等のサイズが小さいために一部または全体が「見にくい」と答えた人が、スマートフォンの利用者の多い賃貸では半数に及んだ。
電子書面が改ざんされていないことの確認については、賃貸では81%、売買では91%が「容易に確認できた」と回答。「確認が容易でなかった」と答えた人のうち賃貸の61%、売買の93%は「どこを見れば確認できるのかわからなかった」と答えている。
こうした結果を踏まえ、事業者側が見やすい書面を作成することに加え、丁寧な対応を行うことが望ましいとの意見が挙がった。書面電子化に向けて今後も社会実験は継続する方針で、宅建法改正から1年を迎える5月までにルールを整備し、具体化する考えだ。
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