脱炭素の報道が活発化するなか、 断熱化に取り組む工務店が増えてきた。 一方で断熱気密のセオリーから外れて結露などのトラブルを招く事例も散在する。 押さえておくべき断熱気密の基本について宮城学院女子大学教授・本間義規氏に聞いた
各層のポイント①
外と内の境界を明確にする
◉快適で省エネルギー性が高く、結露を起こさない建物の実現には、壁や屋根などにおいて外と内の境界を明確にすることが大事になる
➡かつての日本の住宅は外と内の境界が曖昧だったが、1970年代の省エネルギー住宅の開発を機に段階を経て進化した
➡現在では複数のレイヤーで外と内の境界が明確化されている
◉レイヤーが確立した経緯を見ていくことで現在の木造住宅における内と外の境界のあり方がイメージしやすくなる。
以下、壁体を例に見ていく
各層のポイント②
外と内の境界が築かれた過程
◉寒冷地で省エネ化を図った際にグラスウールを充填して躯体を断熱化した。途端に壁内結露が顕在化して社会問題化した
➡断熱材を入れたため熱の境界が明確になったが、一方で水蒸気の境界は曖昧なままだったのが結露発生の理由
◉結露対策としてポリエチレンシートを室内側に張り巡らして水蒸気が壁内に侵入するのを防いだ。この防湿層により水蒸気との境界が明確化された 図2
◉建物の隙間も問題だった。気密性能が低いと体感的に寒さを感じるほか、内外温度差が大きい冬場に圧力が大きくなり、空気が大量に入れ替わるため暖房が効きにくい
➡防湿層を追求する過程で、ポリエチレンシートを連続させると気密化も達成すると判明。防湿と気密を同じラインで兼ねる工法が確立。両者を合わせて防湿気密層と呼ぶようになった
◉次いでグラスウールは風が吹き込むと静止空気が低温の空気と置き換わって断熱性能が発揮されないことが問題となった
➡ 透湿防水シートによる防風層が確立され、外気との境界が明確になった 図1、図2
◉ 透湿防水シートはその名の通り防水性をもっている。このシートで躯体を包むことで、防風と防水の機能を兼ねることができた
➡防風防水層の確立により雨水との境界も明確になった
◉さらに壁内に侵入した水蒸気を結露することなくすみやかに外に排出し、外壁から侵入した水を排出する通気層が防水層の外側に設けられるようになった
➡断熱層、防湿気密層、防風防水層、 通気層の確立により木造在来工法における外と内の境界が明確化された・・・・
【残り1232文字、写真2枚、図・表9点ほか】
この記事は定期購読者限定の記事です。続きは『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン/がんばる地場工務店』(2021年8月30日発行)P72〜に掲載しています。
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