富士経済(東京都中央区)はこのほど、エネルギーマネジメントシステム(EMS)と関連するシステム・機器、サービスの国内市場を調査した結果を「エネルギーマネジメント・パワーシステム関連市場実態総調査 2022」にまとめ発表した。2022年版では、発電・受配電関連の設備・システムの市場を拡充したほか、EMSの活用シーン拡大による市場の変化と今後の方向性を検証した。
2021年度のEMS市場は、新型コロナの影響で設備投資が抑制されたものの、前年度微増の696億円(1.3%増)となる見込み。中長期的には、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて再エネ・省エネニーズが増大し、需給調整や分散型電源の運用などの活用が増えるため、2035年度は2020年度比27.9%増の879億円が予測される。
このうちHEMSについては、ZEH推進による新築戸建て住宅への太陽光発電システム・蓄電システムの設置増加に伴い、採用が増加。2021年度は、新築戸建て住宅市場が回復に向かっていることから、前年比4.8%増の65億円を見込む。長期的には、VPPやDRを通じて需要家や一般送配電事業者、小売事業者、再生可能エネルギー発電業者などに、調整力、インバランス回避などの各種サービスを提供するエネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)が本格化し、住宅でのエネルギー制御システムへの需要が高まるほか、エネルギー用途以外の機器との接続による付加価値の向上などで市場が拡大。2035年度には、2020年度比67.7%増の104億円が予測される。
ハイブリッドパワーコンディショナーは、PVシステムと蓄電システムのセット導入時に配線を簡素化できることや、PV自家消費時の直流・交流交換の電力ロスが軽減されることから、需要の高まりとともに市場が拡大。2021年度は、卒FIT関連やZEHの推進、災害対策意識の向上によって蓄電システムの導入が進み、前年度比6.7%増の144億円が見込まれる。ハイブリッドPCS搭載の蓄電システムを扱う企業も増えているほか、今後、新築・既存住宅、卒FITユーザーによるPV自家消費が増加し、市場が拡大するとみられ、2035年度は2020年度比77.8%増の240億円と予測する。
V2X(自動車用充放電器)は、2018年度以降、大規模自然災害の発生に伴うBCP用や卒FITユーザーのPV自家消費用として市場が拡大。2021年度も、半導体不足により自動車生産に影響がでているものの、引き続きBCPや卒FIT向けに導入が進み、前年度比42.9%増の30億円が見込まれる。今後、新規参入企業の製品投入やEV・PHVの普及、EV・PHVをリソースとしたVPPやDRなどでの活用が期待され、2035年度には2020年度比22.1倍の465億円と、大幅な市場拡大が予想される。
ガススマートメーターは、LPガス用メーターの検定満了に伴う更新需要が落ち着き、2021年度は前年度比7.7%減と市場縮小が予想される。都市ガス用は、採用が増加している東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの大手3社が、2020年末にスマートメーターシステムの共同開発を発表。採用がさらに進み、他の都市ガス事業者での導入も進展すると予想される。長期的には、都市ガス用の需要増加とともに、LPガス用で更新需要の獲得が進むとみられ、2035年度は2020年度比65.2%増の560億円が予測される。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。