社員大工7人を含むスタッフ14人で年間新築19棟の注文住宅を手掛ける平松建築(静岡県磐田市)は、生産性の高い家づくりを目指して、独自に業務のデジタル化を進めてきた。「Microsoft365」と並ぶメジャーなグループウェア「GoogleWorkspace」を使いこなして効率的な業務管理を実現している同社の手法を紹介する。
きっかけは資金計画ソフトの自社開発
同社がデジタル活用に取り組んだきっかけは、2014年に契約前の顧客向けに資金計画をアドバイスする「生涯住居コスト・シミュレーション」を自社開発したこと。計算根拠となる数値条件を細かく入力するほど、正確な予算シミュレーションができることに感動を覚えた社長の平松明展さんは、ソフトの精緻化にのめり込んでいった。
さらに、表計算のクラウドを導入し、あらゆるデータが収集できる環境が整うと、OB施主に協力してもらい、毎月の太陽光発電量や光熱費の実績値を収集し、ソフトの計算根拠に反映させることで算出値がさらに精緻になった。いまでは同社強みの高断熱高気密住宅と太陽光発電の売電との組み合わせで、月額家賃よりも安い住宅ローン返済額で住宅が取得できることを細かく予測できるようになったという。
「小さな情報でもデータとしてコツコツ記録していくことで、将来を正確に予測できる」という実体験が、デジタル化を加速させる平松さんのモチベーションになった。
業務工程をマニュアル化しクラウドで全スタッフが共有
平松建築が会社のグループウェアに「Google Workspace」を導入したのは2019年9月。1人・月1300円程で全社14人分を契約。大容量クラウドストレージ(2TB)、組織内の共有ドライブ、セキュリティ対策を実装する。
同社にとってシステム導入による一番の成果が「クラウド型の社内マニュアル」を制作・運用したことだ。運用準備として、事前に各部署で個別に作成してもらったマニュアルを、1カ月程かけて全社に統合した。全1000項目を超える工程は、短文で端的に各工程のポイントが記述され、作業時間の目安と難易度(5段階)まで記されている。
クラウド環境の強みを生かし、マニュアルには外部のWebサイトリンクや自社制作の動画解説のURLを豊富に引用。音声や映像を組み合わせることで、直観的に理解しやすい工夫を凝らした。
また共同編集機能により、全スタッフがいつでも加筆更新できるのも特長。改訂ごと全スタッフにメールが自動通知され、変更内容を確認できる。現在でも毎週4~5つの改訂があるという。
「従来は、各スタッフが現場で培ったノウハウが個々の中でしか生かせず、その人が辞めたら無くなってしまっていた」と平松さん。マニュアル整備によって「改善の工夫を共有してもらうことで、会社全体の生産性が高まる。また失敗も積極的に開示してマニュアルに盛り込んでもらうことで、他のスタッフが同じ失敗に陥るのを未然に防げる」と効果を実感する。
さらに人材育成面の効果も大きい。・・・・【残り1745文字、写真1枚、図・表3点ほか】
続きは『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン/コロナで見えてきた スマートビルダー &スマートハウス』(2021年7月30日発行)P22~25に掲載しています。
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