脱炭素の意識が高まるなか、環境負荷の低い住宅が注目されている。一方で環境問題は複雑で、その建物が本当に「エコ」なのか判断が難しい。それを数値で表すLCAの仕組みとLCAの視点で見た木造住宅について、県立広島大学准教授の小林謙介氏に聞いた。10項目のQ&A方式で解説していく。ここでは、Q6~Q10を紹介する。
Q.6 住宅のCO2排出量にはどんな特徴があるか
A.CO2排出量は運用の割合が高く、新築・改修時の資材製造は2~3割。輸送や施工、解体・廃棄の割合は極めて小さいことが多い
◉住宅のLCAをCO2排出量中心に見ていく。住宅を含む建築のライフサイクルは、設計→素材製造→建設→運用→改修→廃棄のプロセスを辿る
◉住宅の場合、CO2排出量は資材製造・建設よりも運用の割合が高く、新築・改修時の資材製造は2~3割程度に留まる。それ以外の輸送や施工、解体・廃棄に関するCO2排出量は全体に占める割合が極めて小さいことが多い[図19]。ただしZEHを達成している場合は製造や改修時の資材製造に伴うCO2排出量が大きくなることがある
◉住宅の環境負荷を抑えるには、躯体を高断熱化した上で高効率設備の導入や太陽光発電の設置などを組み合わせて運用エネルギーを削減してCO2排出量を抑えることが有効だと分かる
Q.7 木造住宅のCO2排出量が少ない理由は何か
A.材料製造時に多くのCO2が発生するセメントや鉄の使用量が比較的少ないため。木造の構成材料を見てもコンクリートのCO2排出量が最も多い
◉構造躯体別に見ると、木造はRC造やS造と比べて圧倒的にCO2排出量が少なく、RC造の7割程度[図20]。それは素材製造時に高温を用いるコンクリート(セメント)や鉄骨、鉄筋の使用量が少ない傾向にあるため
◉[図20]の検討は統計を用いた解析であり、実際には同じ種別の構造躯体でも個々の建物のバラツキが大きいので注意する
◉そのほかの材料別に見ると木材由来のCO2排出量の割合が案外多く、次いで木質ボードや石膏ボードなども多い[図21]。これらの素材もセメントや鉄ほどではないが製造時に熱を使う
◉LIMEによりCO2以外の要素を含めて総合的にLCAを行う場合、解体を含めた廃棄のあり方も影響する。たとえば構成材料の分離が難しい石膏ボードは埋め立て処分となるので、環境負荷が大きくなる。設備に関するCO2排出量は比較的低いが総合的に見ると通信ケーブルの比率などが意外に高い
Q.8 太陽光発電はLCAで見るとエコなのか
A.太陽光発電は製造時のCO2排出量が非常に多い。短期間で交換になると新規の太陽光発電の製造によるCO2排出量も少なからず影響し、効果が小さくなる
◉太陽光発電設備を一定量以上設置すると、・・・・
続きは『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン/環境問題・エコハウスのウソ・ホント』(2022年1月30日発行)P30~33に掲載しています。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。