社会資本整備審議会(会長=進藤孝生・日本製鉄会長)は、このほど、斉藤鉄夫国土交通大臣に対して、今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方(第三次)及び建築基準制度のあり方(第四次)について答申した。
2025年の新築住宅・建築物への省エネ基準適合義務化に向けて、適合審査を建築基準法の建築確認・検査によるものとすることや、仕様基準による場合は省エネ適判を要しない(建築主事や指定確認検査機関が建築確認・検査で適合を確認)こととするなど、今後の具体的な環境整備の方策などを盛り込んだ。
今回の答申(「脱炭素社会の実現に向けた、建築物の省エネ性能の一層の向上、CO2貯蔵に寄与する建築物における木材の利用促進及び既存建築ストックの長寿命化の総合的推進に向けて」)は、2014年の「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方について」の諮問と、2012年の「今後の建築基準制度のあり方について」の諮問に対するもの。
両諮問を受けてこれまで建築物省エネ法の制定や建築基準法の改正などが行われてきたが、今回は、建築物の質の向上を図りつつ、建築物分野の中期目標の達成や脱炭素社会の実現に寄与できるよう①建築物の省エネ性能の一層の向上、②CO2貯蔵に寄与する建築物における木材の利用促進、③CO2貯蔵に寄与する既存建築ストックの長寿命化――の観点から取りまとめたとしている。
省エネ基準への適合確認に関してはそのほか、申請側・審査側の負担軽減を図るため、仕様基準の更なる簡素化・合理化を進めるとした。また、新築の財政・税制上の支援やフラット35 については、「義務付けに先行して省エネ基準への適合を要件化する」ことで、混乱なく全面義務化される環境整備を図ることとした。
多段階の断熱等級を提言
さらに、2030年度以降新築される建築物のZEH・ZEB水準の省エネ性能確保を目指し、▽速やかに誘導基準、低炭素建築物の認定基準、長期優良住宅の認定基準を ZEH・ZEB 基準の水準に整合させて引き上げるとともに、住宅性能表示制度に省エネ基準を上回る多段階の断熱等級を設定する。▽省エネ基準適合義務化に伴い、小規模建築物の省エネ基準適合状況の説明は不要となるが、今後は、全ての建築物を対象に建築士から建築主への説明の促進を図る。▽省エネ性能の表示について、表示すべき事項・遵守すべき事項を国が定め、順守していない事業者に勧告等を行うことができるよう強化する。▽現在評価されていない省エネ技術の評価方法の整備を図る――などとした。
既存建築ストックの省エネ化の促進に関しては、増改築部分のみ省エネ基準への適合を求めるなど、過度な負担とならず増改築を停滞させないことに配慮した規制とするなどとした。
建築物の再生可能エネルギー利用促進に関しては、設置を促すことで建築物の省エネ性能向上を図ることが効果的な区域について、地方公共団体が、「建築士から建築主に再生可能エネルギー利用設備の効果等の説明義務を課すことができる制度」を創設することを提言。低炭素建築物の認定基準について、再生可能エネルギーの導入の要件化を求めた。
答申はそのほか、階高の高い木造住宅等の増加を踏まえた構造安全性の検証法の合理化、中大規模建築物の木造化や混構造などの部分的な木造化の促進などの施策を盛り込んだ。
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