性能表示制度において断熱性能等級6・7が新設されるなど高性能住宅を後押しする動きが加速している。一方で熱や水蒸気の性質に熟知した実務者はそれほど多くない。それらを考慮せずに高性能化を進めると思わぬところで結露を招く。森林文化アカデミー准教授・辻充孝氏にいまどきの高性能住宅における結露防止の手法について聞いた。
Q.1
付加断熱の結露のリスクはどう考えればよいのか
A.基本的には付加断熱は結露に対しては安全側に働く。
ただし、防湿層をきちんと施工することが前提となる。
防湿層を省略したり、施工精度が悪いと6地域でも結露の可能性がある
◉住宅性能表示で新設される断熱性能等級6・7クラスになると、付加断熱のケースが増える。こうした断熱層の多層化をふまえた公的な防湿基準の整理はまだされていない。もともと付加断熱により壁内の温度を高く保ちやすくなるため、基本的には壁内結露に対して安全側に働く。シミュレーションによりそれを確認する
◉グラスウールの充填断熱に付加断熱を行う場合、結露に対して安全性が高いのが発泡プラスチック系断熱材を用いた付加断熱だ。比較対象として4地域におけるXPS3種30mm厚の外張り断熱の結露リスクをシミュレーションする。XPSは断熱層に水蒸気が移行しないので防湿層なしでも結露に対して安全側だと分かる[図1①]
◉次に4地域でグラスウールの充填断熱にXPS3種30mm厚を付加断熱した結露リスクを見る。防湿層なしだと結露を起こすが[図1②]、防湿層を設けると結露は生じない[図1③]
◉同様の条件で6地域における結露リスクを見てみる。XPS3種30mm厚を付加断熱すると防湿層なしでも結露はしない。防湿層なしで付加断熱をXPS3種15mm厚に変えると、結露すれすれのきわどい状況になる
◉このように4・6地域いずれの場合もXPS3種で付加断熱を施すことで結露に対しては安全側に働く。また付加断熱材の厚みが増すと安全側に働く。ただし、基本的には防湿層をきちんと施工することが前提となる。防湿層を省略したり、施工精度が悪いと6地域でも結露する可能性はある
◉重要なのは結露計算により安全性を確認すること。最近は無償のものも含めて多くの計算ソフトがある。結露計算は何度もする必要がない。同じ地域で同じ仕様であれば結果は同じなので、地域や仕様が変わるときだけ計算すればよい・・・
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続きは『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン/環境問題・エコハウスのウソ・ホント』(2022年1月30日発行)P51~に掲載しています。
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