プロとして正しいこと
ということで「面白そうなネタ」=自社の得意分野は何でも良いのです。
御社に熟練の職人が居るならば伝統的な工法を、昔から高性能を目指して作っていたのなら高気密高断熱を突き詰める。
多くの工務店は、言えば何でもやってしまっています。障子の張り替えから在来も金物も、何でもやる。しかしながらお客様を取り巻く環境は、どんどん変化しています。今のお客様にとっては「何でもあります」は「何もありません」と同じことなのです。
地縁も途切れて、昔からの人的つながりも失われています。だから知人やネットの口コミで判断する。いや、我が社は地縁の中でお客様の要望に応えて、クレームのないものをきちんと作ってきたのだ、という反論もあるでしょうが、そこで気づいて頂きたいのです。だからこそ売れなくなってきていることに。
お客様に言われる通りのものを作ることが、プロとして正しいことなのかどうか。
プロがシロウトに振り回されているから、何も特徴のないものになってしまう。
昔のように、町に一件しかない中華料理屋なら、チャーハンもラーメンも餃子もあった方が良かったのですが、今はネットで取り寄せることも出来るし、車で出かけるならぐるなびもあります。ユーザーは広い範囲から、選ぶことができる。
だからおいしい「なにか」を持っているところには遠くからもお客様が来る。人気のある店は、一年先まで予約でいっぱいになる一方で、何でもありの中途半端な店にはお客様が寄りつかない。
商圏が狭くて、その地域のコミュニティの中でニーズに応えている時代には、それで正解でした。今のお客様には、昔に比べると選択の自由があります。すると、言われたとおりのことをしてきたところは、もはや言われないとできない状態になっている。
プロであるはずの工務店が、シロウト化してしまっている。
今のお客様は「何でもあります、買って下さい」では買ってくれません。とりわけ中小工務店は、これをやってはいけません。
それよりも、「これなら、最高のものを作ります」と言う方が良い。ニッチなもので良いのです。
ローカルニッチのトップを目指しましょう。その地区で、これに関しては一番だ、と。「これ」だけで良いのです。なんでもいいです。構造設計、接客でも良い。押しつけがましくない丁寧な接客は、十分に口コミの対象になります。
持っているものを見直して、自分たちは何が得意なのか、ひとつに絞るのが大前提です。中小零細規模であれば、ひとつで十分です。
何で勝負するのか、それを決めるのが経営者の仕事です。「これが売れそう」では、得意な人に勝てません。ですから「これが得意」を決める。ともかく決める。そうしたら、それをお客様に伝えましょう。方法はいくらでもあります。
藤本 修(ふじもと・おさむ)
大手ハウスメーカーの営業などを経て香川県で工務店アンビエントホームを起業。その後そのノウハウを提供する「アンビエ ントホームネットワーク」を設立。さらに顧客管理 システムを外販するCRMを立ち上げた。現在は工務店の指導・講演で飛びまわる。
抜粋を新建ハウジングプラスワン2012年6月号に掲載しています。
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