ドイツパッシブハウス研究所が規定する性能基準を満たす認定パッシブハウスを、愛媛県内でこれまでに3棟手掛けた実績を持つ(※)アーキテクト工房 Pure(愛媛県松山市)。
現在も1棟を建築中で、着工を控える別の1棟の施主もパッシブハウスとしての認定を検討中だ。そんな高性能住宅のトップランナーの同社のもとには、全国の工務店からの視察依頼が絶えない。代表の高岡文紀さんは、「1棟でも多く住まい手を幸せにするパッシブハウスが広がってほしい」と、そうした依頼を受け入れ、自社のノウハウを公開している。
※新建ハウジングプラスワン2018年12月号掲載。内容は取材当時のものです。※現在、認定済パッシブハウスは5棟(加筆:2022年1月16日12:00)
ドイツのパッシブハウスに衝撃
10年ほど前にドイツを訪れた高岡さんは、パッシブハウスの性能の高さに衝撃を受け、環境を大切にし、長期にわたって持続可能な建築を目指す考え方に共鳴。翌年には全社員を連れてドイツを再訪、「これ(パッシブハウス)しかない!」という思いを全員で共有し、パッシブハウスレベルの高性能住宅を自社の家づくりのベースとしていこうと決めた。その後、パッシブハウス・ジャパン代表理事の森みわさん(キーアーキテクツ)との出会いを経て、2012年に本社事務所兼モデルハウスとして認定パッシブハウスを建築してからは、全棟UA値0.2~0.3レベルという高性能住宅をつくり続けている。
簡単に壊されない資産価値の高い住宅
性能の高さが同社の住宅の大きな特長ではあるものの、その家づくりにおいて、ただ性能の高さだけを追求しているわけではない。高岡さんは、快適・健康で経済的な暮らしを担保する温熱環境や省エネ性能はもちろん、デザイン性や耐震強度にも優れ、「簡単に壊されてしまわない、経年変化によって美しさや味わい深さを増しながら、長期にわたって高い資産価値を保つ住宅」を目指すアプローチの一つに、高断熱・高気密など温熱環境性能への取り組みを位置付ける。そのため、断熱や気密などの性能基準と同等に大切な要素として、「アトリエ建築家とのコラボ(全棟)による高いデザイン性」「サイディングや合板フローリングなどを一切使用せず自然素材を用いる」「耐震等級3」といった自社コードを厳密に定めている。
C値0.1を切る案件が連続
そうした自社コードを全て実践した上での同社の躯体や温熱環境の水準を見ると、まず、UA値は0.2~0.3W/m2K、C値(気密)はおおむね 0.1cm2/m2程度(0.2が最低基準)で、「最近は、4~5件、立て続けに0.1を切る現場が出ている」(高岡さん)。気密については、全棟実測する。断熱仕様については、壁は充填100mm~+付加断熱50mm~、屋根200mm~、基礎断熱などを最低基準に設定。
換気は第一種熱交換換気設備を必須とし、アメニティエアコンと組み合わせ、ダクト配管により全館冷暖房を行う。換気設備については、・・・【残り1632文字、写真7枚、矩計図1点など】
この記事は、新建ハウジング別冊・プラスワン2018年12月号(2018年11月30日発行)性能の流儀 P.16~19に掲載しています。
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