性能とデザインを、高いレベルで両立させた家づくりで高い評価を受ける工務店の1社が、オーガニックスタジオ新潟(新潟市)だ。社長の相模稔さんは、工務店のほとんどが「住宅産業の延長線上にある家づくり」だとし、「建築」の視点を欠いていることが、性能だけの家づくりや、表面だけのデザインを生み出していると指摘。設計力向上の第一歩は「建築を好きになること」だと力説する。
※掲載情報は取材時のものです
「住宅産業」から脱却しよう
工業製品の部材をカタログで選び、組み合わせるだけで、住宅はできてしまう。これが、相模さんの言う「住宅産業の延長線上にある家づくり」だ。選択して組み合わせるだけなので「設計力が向上しないのは当たり前」と相模さんは話す。
また、設計力が低い工務店のつくる住宅の中には、デザインが「表層」だけにとどまっている例も多い。安直な軒ゼロ設計が増えているのも問題だし、耐力壁の配置や柱の直下率など、構造上の問題を抱えた住宅が、デザイン住宅として売り出されている事例は、誰でも目にしているはずだ。
誰でもそれなりに住宅がつくれてしまう状況で「自分、自社には設計力があると思い込んでいる」。しかし、それは「デザインごっこ」に過ぎないという。
性能だけで終わってはダメ
とにかく性能だけを追求する家づくりのあり方にも、相模さんは警鐘を鳴らす。性能は、UA値のように明確な「根拠」があるから、工務店、生活者、どちらにとってもわかりやすい要素ではある。
しかし「ただ単に断熱性能がいいだけの家であれば、一条工務店の劣化版でしかないのではないか?それならやっている意味がない。地域の工務店でしかできない設計を研鑽してほしい」。
相模さんは「何も犠牲にしない、性能とデザイン、全てを満たす」家づくりこそが今、求められていると話す。「会社を繁盛させ、持続させたいなら、まともな建築をつくるべき」(相模さん)。
美しさはファサードが左右する
デザインというと何か奇をてらったものだと思われがちだが、工務店がつくる、“ふつう” の住宅の美しさはどこにあるべきか。相模さんは「ファサード」のデザインが、美しさの鍵になると考えている。
注意してほしいのは、ファサードといっても建物だけのデザインではない点だ。相模さんが言うファサードには、外構(庭)も含まれている。建物よりも外構が先に目に触れるし、街並みにも影響するので「庭でほとんど雰囲気は決まる」。さらに、外構をしっかり計画することで、中からの外の眺めも良くなり、快適になる。
素材の統一も大事。同社では、事例の8割は・・・【残り1760文字、写真10枚など】
この記事は、新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン2021年5月号(2021年5月10日発行)工務店ならではの広報&ブランディング/攻めと守りの技術研究所P.50~58に掲載しています。
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