米連邦準備制度理事会(FRB)は12月15日、コロナ禍で冷え込んだ経済を回復させるための緩和的な金融政策スタンスから、高いインフレ率を抑制するための緊縮的な金融政策スタンスへと転換する方針を示した。
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住宅業界において注目されるのは、FRBの引き締め政策による住宅ローン金利への影響だ。コロナ禍の住宅需要の高騰には、外出自粛やテレワークの増加によって在宅時間が増え、より快適な住宅空間を求める機運が高まったことなどが背景にあったが、FRBの緩和的政策の影響で住宅ローン金利が低かったことも、住宅需要拡大の追い風になっていた。
今回のFRBの方針転換により、2022年の住宅ローン金利は上昇する可能性が高く、住宅のアフォーダビリティ(住宅の適正費用負担)の問題が一層強調されるとみられている。
12月15日の発表では、FRBによる経済の見通しと予測にいくつかの変更が加えられた。FRBは不動産担保証券(Mortage Backed Securities, MBS)及び米国債の購入の漸減(テーパリング)のペースを加速させ、想定より3ヵ月早い2022年3月までに買い入れを終える。また、需給の不均衡によるインフレ率の上昇を指摘し、2021年における個人消費支出のインフレ率の推定値を3.7%から4.4%に引き上げた。
FRBはインフレ傾向が2022年も持続するとみて、来年のインフレ率の予測値を2.3%から2.7%に引き上げた。フェデラル・ファンド金利の誘導目標の変更は発表されなかったが、2022年及び2023年における複数回の利上げは示唆された。
全米住宅建設業協会(National Association of Home Builders, NAHB)によると、FRBの緊縮的政策により、来年末までに30年物住宅ローン金利は3.6%以上まで上昇する。住宅のサプライチェーンにおけるボトルネックの解消など、コロナ禍で上昇した住宅価格を抑える向きの動きが加速していかなければ、米住宅需給の健全化は難しい。
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