Be a Social Good Builder
社会から求められる工務店に
脱炭素化や持続可能な社会構築への寄与、頻発する災害から命を守る、快適・健康で経済的な暮らしを下支えする―。住まいに対する社会(公共)的ニーズが急速に高まっています。そこには、コロナが起動させたパラダイムシフトも大きく関係しています。こうした流れは、今後も止まることなく加速していくでしょう。
オミクロン株による感染の広がりなど、依然としてコロナ禍の予断を許さない状況が続く先を見通せない経済・市場で、住宅業界はウッドショック・資材ショックをはじめとする深刻な問題に直面しています。
しかし、その厳しい経営環境のなかでも、地域工務店の家づくりと経営は、時代と社会の要請に応えていかなければなりません。
そして、それは、地域のつくり手として、アフターコロナとその先の未来へと“生き残っていく”ための持続的な経営基盤をつくることに直結しています。
そのことは、コロナ禍の市場において、それまで性能向上や地域の木・素材の活用、気候風土と緑豊かな庭との調和、風景にとけ込み長く愛される普遍的なデザイン、地元の職人たちとの協業といった、社会性の高い家づくりに真摯に地道に取り組んできた工務店のポジションが相対的に押し上げられるという現象から、うかがい知ることができます。
同時に、社会性を意識した家づくりと経営は、経済情勢やマーケットのトレンドの変化に左右されにくい“本質的なもの”とも言えるのではないでしょうか。
こうした時代・社会の潮流(価値観)が避けて通れないものであり、地域工務店の生き残り策に直結しているのならば、真正面からポジティブに向き合い、「社会から求められるもの(こと)」を、ものさし(判断基準)として、戦略的(意図的)に家づくりと経営のベクトルを定めたいところです。
すでに、社会や地域の課題解決を自社の事業に落とし込むことにより、経営の好循環を実現している地域工務店による事例が数多く生まれています。
SDGsやESG投資、エシカル消費といった考え方が共通の価値観として広がりを見せつつあるなかで、これからの市場は産業を問わず、社会や地域の「穴を埋める(課題を解決する)」ビジネスが成長分野となります。
もともと、地域に根差し、地域の住民や社会とのつながりのなかで家づくりを生業としている工務店は、例えば空き家の利活用や防災、福祉(介護)、まちづくり・地域活性化など地域の社会的な課題の現状に精通しており、実は、建築のスキル・ノウハウや人脈など解決につながる活動・事業を実践できる潜在的な能力を備えています。
社会・地域の穴を埋めるビジネスは、住宅事業とも親和性・シナジーが高いことから、具体的に取り組みを開始する地域工務店も増えており、今後はそうしたビジネスを最初から自社事業にひもづけながら起業するといった工務店も登場してくるでしょう。
そうした状況は、地域工務店の社会的機能を顕在化するとともに、業としての工務店の存在価値と、その家づくりの価値を向上させることにつながるはずです。ひらたく言えば、「地域の人たちから信頼され、応援される工務店」の実現へとつながっていくはずです。
そして、最も重要なのが、社会・地域の穴を埋めるビジネスに取り組む会社は、そこで働きたいと望む、良い人材を呼び寄せる強い吸引力を持つということです。
人手不足が慢性化し、今後はさらに人材獲得競争が激化していくことが必至の市場で、より良い人材の確保は、持続的な家づくりと経営のカギを握っています。
地域に根を張り、そこに暮らす家族を幸せにする良質な住宅をつくり続ける地域工務店は、すでに社会的使命を果たしています。
ただ、それを、より自覚的、意識的に行いながら、同時に従来の枠組みにとらわれずに、新しい時代と社会の価値観を踏まえて自然な形で工務店という機能を拡張することで、可能性をさらに広げることができるはずです。
コロナ禍を乗り越え、未来へと生き残っていくために。
業界を挙げて「社会から求められる工務店」を目指していきましょう。【編集長・関卓実】
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。