無料相談会で顧客を絞り込む
8年間で同社は独自のスタイルを築き上げた。ただし、このスタイルは広く支持されることはないと橘さんは考えている。富山県では今でも大きい家が好まれる。DIYの指向性をもつ人も限られる。価格も決して安くはない。だが、少数でもこの家づくりを支持する人は確実にいる。それを漏らさず受注する。小さな工務店だからできる戦略だ。
同社の建て主の半数はUターン組や移住者だ。橘さんたちには地元への愛情と都会的なセンス、合理性を重んじる現代的な価値観が同居している。そこに建て主はシンパシーを覚えているのだろう。
集客はWebに特化。中心となるのはブログだ。設計や施工に関する具体的な内容を中心に1400本の記事を書いた。これらはSEO対策として有効に働いている。
Webサイトを見て興味をもった見込み客の次のステップは予約制の無料相談会となる。月に4日間開催しており、1日1組限定でじっくり話す。次のステップが予約制の竣工見学会だ。新築は年間2棟ペースなのでタイミング次第になる。その意味でも無料相談会の位置付けは大きい。そしてプラン作成は無料では行わない。30万円の着手金を支払ってもらってからだ。2人体勢ということから、営業に労力は割けない。自分たちの取り組みを理解してくれる建て主を選別することを徹底している。
現状、無料相談会の段階では見込み客の属性にばらつきがあり、顧客になり得ないタイプも混ざる。橘さんはWebサイトの情報発信をさらに充実させることで、顧客選別の精度を上げようと考えている。
まずは価格の情報だ。新築とリノベーションの総工事費の目安を伝える予定だ。リノベーションに関しては耐震と断熱改修を前提としているので、それを踏まえた価格情報を伝える。このほか引き渡し後の維持管理の情報を発信し、住まい方とともに長期的な視点で見た家の価値について伝えていく予定だ。
もう1つの課題が土地なし客への対応だ。計画が動き出すまでに時間が掛かることが多い。不動産会社との連携のほか宅建士の資格をもっていることから、不動産部門を立ち上げることも視野に入れて検討中だ。どちらもハードルが高く、答えを出すのには時間が掛かりそうだ。
事業拡大は考えず2人で活動することにこだわっていきたいと語る橘さん。目の前の課題を1つずつ解決して確実にレベルアップしていきそうだ。
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