東北大学(宮城県仙台市)流体科学研究所の中村寿准教授・丸田薫教授らの研究グループは、リチウムイオン電池の電解液の主成分である炭酸エステルの着火過程を調べ、分子構造のわずかな違いで着火のしやすさが大きく異なることを実験的に示した。
同研究では、試料の着火のしやすさの評価と温度域ごとの化学反応の分離観察を実現できる独自の温度分布制御マイクロフローリアクタを用いて、リチウムイオン電池の電解液主成分(炭酸エステル)の着火反応の解明に取り組んだ。その結果、エチル基(-CH2-CH3)を持つ炭酸エステルは熱分解反応が低温で進行するため、メチル基(-CH3)のみの炭酸エステルより着火しやすいことがわかったという。着火のしやすさの指標として引火点がしばしば使われるが、これは化学反応のしやすさだけでなく、蒸発のしやすさに強く依存するもので、エチル基を持つ炭酸エステルはメチル基のみの炭酸エステルより蒸発しにくいため、引火点の指標では着火しにくくなるが、化学反応の観点では着火しやすいことになるという。
同研究により、化学反応と蒸発の特性を切り分けて着火性を評価し、それぞれの特性に応じた発火対策を検討できるようになった。さらに同研究グループは、炭酸エステルの統合燃焼反応モデルの構築にも成功。実験結果を正確に予測可能であることを示した。
これらの結果から、リチウムイオン電池の電解液主成分の正確な着火限界予測が可能となり、発火しない安全なリチウムイオン電池の開発や運用に資することが期待されるとする。また、炭酸エステルを合成燃料として用いる高効率燃焼機器の設計開発にも資することが期待されるとしている。
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