富士経済(東京都中央区)はこのほど、経済性と環境性を両立させた「第三者所有モデル」や「自家消費型」の導入が増えている太陽光発電(PV)システムの国内市場、および材料価格高騰によって業界再編が加速すると予想される太陽電池の世界市場についての調査結果を「2021年版 太陽電池関連技術・市場の現状と将来展望」にまとめ発表した。
国内におけるPVシステムの設置は、サービス事業者が顧客の所有する建物の屋根などにPVシステムを設置し、電力購入契約を結ぶ顧客へ電力を供給するPPAモデルが拡大し、2021年度は277億円を見込む。FITによる投資型から自家消費型へ移行する過渡期に入っており、初期投資なしでPVシステムを設置でき、契約期間終了後は顧客に無償譲渡される同モデルは、効果的な導入手法として市場をけん引。これまで取り扱いに慎重だった中小ビルダーにおいても費用負担感を軽減できるPPAによる導入提案が標準化されつつあり、新築戸建て住宅への蓄電池とセットにした展開も予想される。今後も市場拡大が続くとみられ、2035年度は2020年度比15.9倍の2553億円と予測する。
PVシステムにおける自家消費型は、FITによる売電価格の引き下げと電力料金の上昇によって年々比率が上昇しており、2035年度には比率66.5%、5857億円が予測される。住宅向けは、PVと蓄電・蓄熱システムのセット導入が増えており、蓄電池の導入率は50%程度まで上昇。新築戸建て住宅では、蓄電・自家消費を前提とした自家消費型が標準化しつつある。今後、FITによる余剰電力買取制度の廃止も想定されるため、住宅向けにおいては自家消費型比率は2035年に100%となると予測。
■国内市場
太陽電池の国内市場は、新型コロナの影響により2020年度上半期に大きく減少。下半期には住宅向けが回復に向かったものの、材料価格高騰による非住宅向けでの導入先延ばしなどから市場が縮小した。2021年度は、材料価格高騰に伴う値上げにより金額ベースで拡大し、前年度比7.9%増の2819億円が見込まれる。2022年度以降は、非住宅用のFIT案件の受注残と新規需要獲得の減少により、縮小が続くとみられる。中長期的には、世界的な生産拡大に伴う低価格化に加え、電力料金上昇とカーボンニュートラル対応ニーズの高まりから、2030年度頃に縮小は下げ止まり、市場は拡大に向かうとみられる。国内に太陽電池を製造・開発するメーカーが少ないため、今後、日本の住宅事情に合わせたハウスメーカーとの共同開発なども減少し、海外メーカーのシェアが増加すると予想される。
新型・次世代太陽電池(色素増感、有機薄膜、ペロブスカイト、GaAs)については今後の市場形成が期待されており、2035年には太陽電池市場の5.7%、86億円が予測されている。
■世界市場
太陽電池の世界市場は、各国の地球温暖化への関心の高まりや再生可能エネルギーの導入率を高める政策が後押しとなり、拡大を続けている。2021年は、出力ベースで前年比44.8%増、金額ベースでは材料価格・輸送費高騰などによる出荷価格の上昇により10兆円超えが見込まれる。生産コストの上昇が企業利益を圧迫し、業界再編が加速するとみられる。2035年には、出力ベースで500GW近くまで伸びるものの、材料価格の落ち着きと太陽電池の生産規模拡大に伴う生産コストの低下により、金額ベースでは10兆1661億円と予測される。
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