「Saho.Lab(さほらぼ)」のブランドで住宅事業を展開する佐保建設(岡山県勝央町)は、土木工事主体の地場ゼネコンから、若い人たちが生き生きと楽しく働きながら、地域で持続的に経営していける“暮らしづくり企業”に生まれ変わるために約10年前、住宅事業をメインとする業態に大きく転換した。
設計力を高めることに重点を置きながら変革を進めた結果、家づくりへの情熱を持つ若いスタッフが集まり、1年余り先まで着工枠が決まるといった成果を生み出している。
トップランナーに学ぶ
トップランナーに学ぶ同社社長の佐藤尚紀さんが、根幹から経営を変革するために選んだ方法は、設計力の高さや建築的な魅力があふれる住宅で多くの工務店からベンチマークされていたベガハウス(鹿児島市)から徹底的に学ぶことだった。住宅のネットワークを通じて知り合った、当時のベガハウス社長の八幡秀樹さん(現会長)の快諾を得て、同社への訪問を重ねながら、経営と家づくりの目指すべき方向性を固めていった。「最も衝撃だったのはスタッフさんの“ おもてなし” の姿勢。詳細図から納まりまで全てオープンにしながら、どのスタッフさんも戸惑うことなく丁寧に説明してくれる。こんな会社を目指したいと強く思った」と佐藤さんは振り返る。
人材とあわせて“ ベガスタイル” を支えるのは、地域工務店としては群を抜く設計力だ。佐藤さんは、当時、同社のチーフ設計プランナーだった幸野成一さんのもとを頻繁に訪れて「設計道場」的なスタイルで教えを請い、自身の設計スキルを高めていった。
「ものづくりを究め、豊かな暮らしを創る」と理念を掲げ、少しずつ若い人材を迎え入れながら、新しい道を歩み始めたさなか、佐藤さんの決断を応援する八幡さんの熱い想いのもと、ベガハウスからさらに強力な後押しを受けた。同社プランナーの長田友紀さん(現取締役)と「テクニカル(現場監督)」の大木拓也さんの派遣だ。長田さんが3年間、大木さんが1年半の間、佐保建設に出向し、ベガスタイルを根付かせた。長田さんからは、設計の意図を、現場をはじめとする家づくりの関係者に浸透させて一体的な“ チーム”にしていく「伝える力」を、大木さんからは現場監督が職人と共に、図面に描かれていない納まりなども自ら判断して形にしていく「つくる力」を学んだ。
「やりたい建築」を明確に
より建築的なアプローチを強めていこうと佐藤さんが振り切ったきっかけは、幸野さんの設計による「ショーホーム」を建てたこと。佐藤さんが「岡山県北のローカルなエリアでガルバリウム鋼板の屋根に壁といった住宅が受け入れられるのか」と一抹の不安も感じていた同ショーホームは、結果的に多くの受注を生み出した。「建築(設計)の力を見せつけられた。自分たちのやりたい建築を明確にして、それによって住まい手の暮らしを豊かにしていくんだという強い意志を持つことの大切さを教えられた」と佐藤さんは語る・・・・
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この記事は、『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン2021年12月号工務店の経営を支える設計力』(2021年11月30日発行)P.22〜27に掲載しています。
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