住宅・不動産企業向けのコンサルティングを行うエスイーエー(新潟県上越市)代表の加藤善一さんは、脱炭素社会への潮流、頻発する自然災害、高騰する電気料金など、「時代と社会の方向性から住まいのあり方を考慮すればスマートハウスしかないということが明確に示されている」と語る。スマートハウスは、エネルギーを自給しながら、家庭内の冷暖房設備、照明器具、調理器具など電気を使用する機器を「HEMS(ヘムス)」によって従来の見える化から制御化することで、エネルギー消費を最適化して省エネ、CO2排出削減を目指す住宅を指す。加藤さんは「それに加えて、災害から家族の暮らしを守る高い防災性能を備え、さらには長期にわたって資産価値を保ち続け、真に健康で快適に豊かに暮らすことができる住宅」と定義する。
「Smart2030 零和の家」実棟モデルをオープン
エスイーエーは今年5月末、加藤さんが定義するスマートハウスを具現化したモデルハウス「Smart2030 零和の家」を上越市内にオープンした。加藤さんは、同モデルハウスを拠点に、全国の地域工務店によるスマートハウスへの取り組みを活性化したい考えだ。
「大手ハウスメーカーは、すでに独自の技術でスマートハウスを標準化しつつあり、同時にHEMSによる実測データの収集・分析、高い資産価値を備えるスマートハウスの中古(再)流通の仕組みの構築など着々と進めている」と指摘し、「これに対し、地域の工務店による取り組みは圧倒的な遅れをとっており、脱炭素化や防災に対する生活者の意識が高まっていくなかで“致命傷 ”になりかねない」と訴える。完成したモデルハウスを、意欲ある工務店に対して積極的に開放していく方針で、それにより地域の工務店によるスマートハウスの普及を目指す。
再エネ自給率100% 災害時の停電・断水にも対応
オープンしたモデルハウスSmart2030 零和の家は、再生可能エネルギー(太陽光発電)による自給率100%で、高い防災・災害対応機能を備えた住宅だ。災害発生時の停電に対応でき、断水しても家族4人が3日間は普段通り暮らすことができるという。
12.075kWの太陽光発電システムと200V、100Vの住宅設備機器に対応できる9.8kWhの大容量蓄電池を備える。AI搭載のHEMSによって電気を最適にコントロール。EV(電気自動車)に電気をためて家庭で使うV2Hも前提条件としており、EVが蓄えた
電気・最大出力6kWを住宅に給電でき、太陽光発電した電気をEV車に充電することもできる。加藤さんは「社会の方向性と国の施策を考えれば、近い将来、EVが一般化することは間違いない事実で、それは必ず人々の暮らし方と住宅にも関係してくる」と強調する。・・・・【残り1158文字、写真11枚、図・グラフ2点】
この記事は、『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン2021年8月号 コロナで見えてきた スマートビルダー&スマートハウス』(2021年7月30日発行)P.58~61に掲載しています。
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