柴木材店(茨城県下妻市)は、伊礼智さんなど建築家とコラボしてモデルハウスを建築しながら、その設計のメソッドを吸収し、自社の設計スキルを磨く。社長の柴修一郎さんは建築家とのコラボは「固定観念やコストの制約を超えられるチャンス」と話す。これまで13年間で3棟のフラグシップモデルハウスを建てる過程で着実に受注単価が向上し、何よりも暮らしや住まいに対する価値観を共有する顧客とつながりやすい状況が生まれている。柴さんは、設計やデザインの威力を確信している。
〈掲載情報は取材時のものです〉
土地と一体で暮らす平屋
「里山の平屋暮らし」(茨城県つくば市)は、伊礼さんが設計を、造園家の荻野寿也さんが造園を手掛けた、2019年完成の柴木材店の最新のモデルハウスだ。東京・秋葉原から快速電車で45分のつくば駅からタクシーで10分ほどの住宅街の一角にある。小高く開けた場所からは、昔ながらの農家住宅の土蔵や柿の木、遠くには里山の稜線が眺められるのどかな風景が広がる立地だ。
「内部の心地よさだけでなく、外部にもつながり、その土地と一体で暮らしていることが感じられる住まい」という伊礼さんの設計意図通り、外観は一見シンプルな平屋だが、建物に入ると、使いやすい水まわりや統一感のある内装、心地よい温熱環境、大開口窓から切り取られる景色、中間領域や庭への動線など、あらゆる世代の暮らし方を満たす空間を味わうことができる。
モデルで設計力磨く
「建築家と手がけるモデルハウスは、普段は固定観念とコストの制約に縛られてしまう私たちにとって、想像を超えた住宅を一緒に手掛けられるチャンス」と柴さんは話す。柴木材店では2007年から、2013年、2019年と6年おきに3棟のフラグシップモデルハウスを建築しており、そのうち最近2棟は伊礼さんが設計を手掛けている。
「定期的にモデルハウスを建築することで、自社の設計レベルが着実に高まっていることを実感している」。柴さんによると、その効果により、同社の受注単価は新たなモデルハウスを建築するごとに500万円ずつ上がる傾向にあるという。同社は年間24棟前後の新築住宅を手掛けるが、「里山の平屋暮らし」を竣工した2019年の平均受注単価は3200万円(税抜)。「3500万円を超える契約にも慣れ、どっしり構えられるようになってきた」と柴さんは話す。
古びないデザイン
デザイン面で同社の家づくりに通底するのは「トレンドを追わない、古びないデザイン」であること。2013年に建てた伊礼さんの設計によるモデルハウス「i-works 1.0」は、7年半たった今でも見学希望者が後を絶たない。その設計理念は確実に社内に浸透している。その源にあるのは、・・・・
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この記事は、『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン2020年12月号 いまどきの工務店住宅』(2020年11月30日発行)P.38~43に掲載しています。
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